個人保証とハッピーリタイヤ


帝国データバンクの調査(2013年)によると、オーナー企業の69%が後継者不在であり、65歳以上のオーナー社長の49%が後継者問題を抱えています(広島県は75%が後継者不在)。オーナー社長からしてみれば、ご子息が後継者として会社を継ぐのは当たり前だとお考えになっているかもしれません。しかし、ご子息はそう思っていないということです。

その原因の一つとなっているのが個人保証だといわれています。経済環境が厳しい中、過大な債務を抱える企業を個人保証してまで引き継ぐことにご子息が二の足を踏んでいるというのです。あまつさえ「創業は易く守成は難し」といわれ、事業を先代から引き継ぐことは難しく、後継者は様々な困難に直面します。その困難に、個人保証という精神的な重荷を背負いながら立ち向かうことに躊躇するのはむしろ当然かもしれません。

平成25年6月、政府は経営者の個人保証制度の見直しを閣議決定しました。平成25年9月に有識者会議を発足させ、年末を目途にガイドラインを策定する予定です。ガイドラインでは、経営者に個人保証を求めない要件として次の要件が示される見込みです。

① ガバナンスの強化
・経営者の財産債務と会社の財産債務が明確に区分されていること
・経営者の役員報酬、株主配当金、経営者への貸付金が社会通念上合理的であること

② 財務基盤の強化
・会社の収益力で借入金の返済が可能であること
・物的担保が十分に提供されていること

③ 経営の透明性の確保
・財務状況を正確に把握し、適時適切に情報開示すること

御社に財務のスキルがあれば、ガバナンスを強化することも、財務基盤を強化することも、経営の透明性を確保することもできます。個人保証を外すという選択肢を後継者に与え、入口のハードルを下げてやることは十分に可能なのです。また、これらの財務的な取り組みの効果は個人保証を外す目的にとどまらず、中小企業の活力を引き出す効果も期待できます。これらの財務的な取り組みをしている企業の業績が悪かろうはずがないからです。

オーナー企業の経営者にもいずれリタイヤする時期がきます。その時、会社を引き受けてくれる後継者がいれば安心してリタイヤすることができます。オーナー企業の経営者が思い描く「70歳までに社長の座を後継者に譲り、自分は後見役として会長職に留まり、悠々自適な老後を送る」というハッピーリタイヤを実現するにはそれに向けた取り組みが必要です。それは後継者のためではありません。経営者ご自身が有終の美を飾るための取り組みなのです。