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法人化の節税効果(配偶者へ所得分散)

法人化の節税効果(配偶者へ所得分散)

法人化のメリットは節税効果にありますが、その手段の一つとして、配偶者へ所得を分散して節税する方法があります。

経営者一人だけで役員給与を受け取ると、一人分の所得控除(給与所得控除と基礎控除)しか受けられませんが、配偶者に所得を分散すると、二人分の所得控除が受けられます。

また、所得税は7段階の累進税率で最高税率は45%ですが、所得分散によって税率が下がります。

一方、配偶者が受け取る給与が一定額を超えると所得税や社会保険料がかかりますが、それを差し引いても節税効果があります。

検討の前提として、経営者は「広島市に住む40歳未満で、所得控除は社会保険料控除・配偶者控除・配偶者特別控除・基礎控除」とし、その配偶者は「広島市に住む40歳未満で、所得控除は社会保険料控除と基礎控除のみ」とします。

また、税負担額は「所得税・市民税・県民税・本人負担分の健康保険料の合計額」とします。

検討は、役員給与控除前の法人所得1000万円の全額を10万円刻みで経営者と配偶者に配分して、二人の税負担額の合計金額を計算してみました。

(単位:円)

経営者給与

配偶者給与

税負担額合計

節税額

10,000,000

0

1,846,792

-

9,500,000

500,000

1,694,896

-151,896

9,000,000

1,000,000

1,543,000

-303,792

8,000,000

2,000,000

1,548,040

-298,752

7,000,000

3,000,000

1,386,240

-460,552

6,000,000

4,000,000

1,291,516

-555,276

5,000,000

5,000,000

1,273,968

-572,824

経営者だけが役員給与を受け取るよりも、配偶者に所得を分散させるほうが節税になることが分かります。

ただし、配偶者に勤務実態(労働実態or企業経営の実態)がなければ給与を支払うことができませんので、配偶者の勤務実態を考慮して配偶者に分散する給与の金額を定める必要があります。

(この検討は平成29年11月時点の法令に基づいて計算しています。法令が変更になれば結論が変わることがあります。)

法人化の節税効果(法人へ所得分散)

法人化の節税効果(法人へ所得分散)

法人化のメリットは節税効果にありますが、その手段の一つに、所得を法人に分散して節税する方法があります。

所得税は7段階の累進税率で最高税率は45%です。一方、法人税は中小法人の場合は2段階税率で最高税率は23.4%です。そのため、法人の所得を全て役員給与として受け取らずに一部を法人に留保すると、所得税と法人税のトータルの税負担額が軽減されるケースがあります。それが所得を法人に分散して節税する方法です。

検討の前提として、経営者は1名で「広島市に住む40歳未満の独身、単身世帯の事業者、所得控除は社会保険料控除と基礎控除のみ」とし、法人は中小法人とします。

また、個人の税負担額は「所得税・市民税・県民税・本人負担分の健康保険料の合計額」とし、法人の税負担額は「法人税・地方法人税・法人市民税・法人県民税・法人事業税・地方法人特別税の合計額」とします。

検討では、法人の所得を10万円刻みにし、税負担額が軽くなるように個人と法人に分散してみました。そうすることで法人の所得に対して税負担額が最小となる役員給与の金額が分かります。

(単位:円)

法人所得(役員給与控除前)

役員給与

法人に留保

11,400,000

11,400,000

0

15,900,000

11,400,000

4,500,000

20,000,000

12,000,000

8,000,000

30,000,000

15,900,000

14,100,000

40,000,000

18,400,000

21,600,000

50,000,000

20,100,000

29,900,000

役員給与控除前の法人所得が1,140万円までは全額役員給与で受け取るほうが有利です。その後、1,590万円までの450万円は全額法人に留保するほうが有利です。2,000万円では役員給与と法人留保の割合が6:4にまで接近し、3,000円超になると割合が逆転します。

税負担額だけが役員給与の金額を決定する判断基準ではありませんが、その一つとして知っておいて損はないでしょう。また、法人に留保した資金は個人的に使うことはできませんから、その使い道を事前に考えておく必要があります。再投資に利用するのも一つですし、退職金として個人に還流させるのも一つだと思います。

(この検討は平成29年11月時点の法令に基づいて計算しています。法令が変更になれば結論が変わることがあります。)

法人化の節税効果(給与所得控除)

法人化の節税効果(給与所得控除)

法人化のメリットは節税効果にあります。法人化によってどの程度の節税効果が見込めるか表にしてみました。

なお、節税効果は扶養親族の有無や年齢など個別的な事情で変わります。ここでは、「広島市に住む40歳未満の独身、単身世帯の事業者、所得控除は社会保険料控除と基礎控除のみ」という前提で作表しています。

表における「年間収入」とは、事業所得における「青色申告特別控除前の所得金額」、給与所得における「給与支給額」を意味します。

また、税負担額には健康保険料を含め、年金保険料を含めません。年金保険料の負担は将来的な受取額に反映されるので損得がないと考えられるからです。よって、税負担額とは、事業所得における「所得税・市民税・県民税・事業税・国民健康保険料の合計額」であり、給与所得における「所得税・市民税・県民税・会社負担分を含む健康保険料の合計額」とします。

(単位:円)

年間収入

①事業所得の税負担額

②給与所得の税負担額

節税額(②-①)

500,000

67,727

69,878

2,151

1,000,000

69,789

106,022

36,233

1,500,000

154,339

200,605

46,266

2,000,000

273,089

298,016

24,927

2,400,000

368,029

368,460

431

2,500,000

391,839

378,960

-12,879

3,000,000

515,390

488,448

-26,942

3,500,000

656,717

579,140

-77,577

4,000,000

819,533

675,632

-143,901

5,000,000

1,143,991

883,968

-260,023

6,000,000

1,553,965

1,121,900

-432,065

7,000,000

1,963,837

1,409,832

-554,005

8,000,000

2,322,944

1,762,064

-560,880

9,000,000

2,667,539

2,103,800

-563,739

10,000,000

3,031,497

2,455,784

-575,713

15,000,000

5,235,671

4,724,996

-510,675

20,000,000

7,529,712

6,988,572

-541,140

25,000,000

10,153,865

9,342,072

-811,793

30,000,000

12,776,308

11,842,072

-934,236

この表から読み取れることがいくつかあります。

まず、「青色申告特別控除前の所得金額」が240万円以下の場合は、法人化すると税負担額が増加します。法人の均等割を含めて考えれば、350万円以上にならないと法人化するメリットはありません。

また、給与所得控除だけでも単年度の節税額が数万円~数十万円になります。長期的に見ると数十万円~数百万円の節税となります。

そして、年間収入が高いほど節税額が大きくなります。法人化後に年間収入が伸びればその分節税のメリットを享受していると理解しましょう。

(この検討は平成29年11月時点の法令に基づいて計算しています。法令が変更になれば結論が変わることがあります。)

法人化のタイミング

法人化のタイミング

もしあなたが法人化を検討しているなら「どのタイミングで法人化するのがベストか」は知りたいことの一つだと思います。法人化のメリットは節税効果にあるので、その観点から法人化のタイミングを判断するのが自然です。

まず、法人化の基本的な節税効果を復習します。

個人事業主が法人化すると、所得の種類が事業所得から給与所得に変わります。事業所得の所得控除は65万円が上限ですが、給与所得の所得控除は下限が65万円で上限は220万円です。そのため、同じ収入の場合は通常、給与所得のほうが節税になります。これが基本的なカラクリです。

一方、法人化すると赤字でも均等割を納税することになります。均等割は法人化に伴う追加的な負担といえます。広島県広島市に所在する法人(資本金1,000万円以下、従業者50人以下)の均等割は毎年71,000円です。

上記2点を判断材料とすると、節税額が均等割を上回れば法人化するメリットがあるので、それが一つのタイミングといえるでしょう。

節税効果は扶養親族の有無や年齢など個別的な事情で変わります。ここでは、「広島市に住む40歳未満の独身、単身世帯の事業者、所得控除は社会保険料控除と基礎控除のみ」という前提で検討します。

検討は、事業所得における税負担額と給与所得における税負担額の差額が均等割を上回る収入を調べることを目的とします。ここで収入とは、事業所得における「青色申告特別控除前の所得金額」、給与所得における「給与支給額」を意味します。

また、税負担額には健康保険料を含め、年金保険料を含めません。年金保険料の負担は将来的な受取額に反映されるので損得がないと考えられるからです。よって、税負担額とは、事業所得における「所得税・市民税・県民税・事業税・国民健康保険料の合計額」であり、給与所得における「所得税・市民税・県民税・会社負担分を含む健康保険料の合計額」とします。

以上を前提に検討すると、青色申告特別控除前の所得金額が340万円以上になれば節税額が均等割を上回る、という結論が得られます。

青色申告決算書をご覧ください。43番に「青色申告特別控除前の所得金額」欄があると思います。この欄の金額が安定して340万円を超えるなら法人化する価値があります。

ただし、注意点が2つあります。

先程も紹介した通り、節税効果は扶養親族の有無や年齢など個別的な事情で変わります。もしあなたが本気で法人化を検討しているならお問い合わせ下さい。あなたに合った最適なタイミングを計算します。

また、税理士等の専門家が作成した青色申告決算書をもとに判断する方が無難でしょう。甘い見通しで法人化するとかえって損になることもあり、ばかばかしいからです。そういう意味では、法人化を検討するタイミングは顧問税理士を探すタイミングかもしれません。

(この検討は平成29年11月時点の法令に基づいて計算しています。法令が変更になれば結論が変わることがあります。)

法人化のメリット

法人化のメリット

事業がある程度大きくなったなら法人化したほうがいいとよく言われます。確かに、法人化のメリットは大きいのですが、闇雲に法人化してもそのメリットを効率的に享受することはできません。

予め法人化のメリットを理解した上で、計画的に法人を設立し、計画的にメリットを享受することが大切です。その第一歩として、法人化のメリットをまとめてみました。

法人化のメリットをまとめると次のようになります。

(1) 信用力が増加する
(2) 節税できる
 ① 給与所得控除
 ② 所得の分散
 ③ 消費税
 ④ 生命保険
 ⑤ 退職金
 ⑥ 損益通算
(3) 老後に備えることができる
 ① 厚生年金
 ② 退職金

(1) 信用力が増加する

個人の信用力は財産や社会的地位で判断されることが多いと思います。つまり自分を知っている相手にしか判断できず、不特定多数の第三者に対して客観的に信用力を示す手軽な方法はありません。

法人の信用力は、資金力・収益力・ガバナンス体制の3つで判断されます。資金力は資本金の大きさ、収益力は利益の大きさ、ガバナンス体制は内部牽制機能の有無や働き具合で測定されます。つまり、定款、履歴事項全部証明書、計算書類などで自社の信用力を手軽に提示することが可能です。

法人化すると信用力が増加するというのはそういうことです。

債務超過の法人に信用力はありませんので、資産超過を維持できる程度の資本金は必要ですし、創業当初の赤字は許容されますが、早い時期に黒字転換させる必要があります。

信用力が高まると新規取引先の開拓や資金調達が容易になります。事業の成長に加速をつけたい個人事業主にとって法人化は適した方法です。

(2) 節税できる

① 給与所得控除

法人化すると事業主が受け取る給与は給与所得として課税されます。事業所得の所得控除は65万円が上限ですが、給与所得の所得控除は下限が65万円で上限は220万円です。そのため、同じ所得であっても通常、給与所得のほうが節税になります。

② 所得の分散

所得税は所得が高くなるにつれて税率が高くなるため、税負担が累進的に増加します。法人では、所得を分散させることでそれを回避することができます。具体的には、家族に分散する方法と法人に分散する方法とがあります。

所得を家族に分散する方法は個人事業主でも専従者給与として可能ですが、事前の届出や変更時の届出が必要なため機動的な運用は望めません。また、専従者は配偶者控除や扶養控除の対象外となるデメリットがあります。

法人ではそういうデメリットなしに機動的に所得を家族に分散することができます。もちろん、勤務実態に応じた支給額となりますので、事業を家族に手伝ってもらって所得を家族に分散しましょう。

所得を法人に分散する方法とは、意図的に法人で法人税を納税する方法です。所得税は累進税率であるため、給与所得が一定額を超えると法人税で納税するほうが節税になります。

もちろん、法人に留保された資金を経営者が個人的に使うことはできませんが、自分の意思でコントロールできる資金が増えることに変わりはありません。

③ 消費税

資本金1000万円未満で設立された法人は、1期目の消費税が免税となります。また、1期目の上半期の課税売上高(or給与支払額)が1000万円未満であれば、2期目の消費税も免税となります。

④ 生命保険

個人が負担した生命保険の保険料は所得控除することができますが、最高12万円までと制限されています。その点、法人では制限なく損金にできます。例えばハーフタックスの保険であれば、支払った保険料の1/2が損金となり、その分節税となります。

⑤ 退職金

個人事業主が自分や家族に退職金を支払っても経費になりませんが、法人が自分や家族に退職金を支払うと損金になるため、退職金で節税することができます。

⑥ 損益通算

所得税では事業所得と株式・土地の譲渡損を損益通算することはできませんが、法人税では当然に損益通算することができます。本業に加えて株式投資・不動産投資をする場合は、万一の損失があった場合でも税金分は補てんされるという意味で法人化にメリットがあります。

以上のほかにも、現在、賃貸物件に居住しているならば、法人契約に変更して借上げ社宅とすることで節税する方法もあります。法人化すると節税の余地が大きくなると理解して良いでしょう。

(3) 老後に備えることができる

① 厚生年金

法人化すると社会保険は強制加入なので厚生年金に加入することになります。国民年金だけで老後の生活を送るのは困難ですが、厚生年金ならより多くの年金を受け取ることができます。保険料の負担は当然に増えますが、老後の安心のために現在の消費を少しだけ我慢するのは堅実な人生設計だと思います。

② 退職金

前述したように、法人では生命保険と退職金で節税できるため、効率よく老後の一時金を手にすることができます。具体的には、生命保険で退職金の原資を積み立てます。退職時期が到来したら生命保険を解約し退職金を支給します。解約返戻金は益金となりますが、退職金は損金となるので法人税が課税されることはありません。

また、受け取った退職金は、勤続年数に応じた所得控除後の1/2が課税される仕組みなので、税金の負担が少なくて済みます。効率よく老後の一時金を手にできることが法人化する最大のメリットだと思います。

法人化のデメリットは、設立に登記費用が掛かること(株式会社20万円、合同会社6万円)と、赤字でも支払う税金がある(均等割:広島市の法人は年間71,000円から)ことくらいです。

自分に合った法人形態を正しく選択して計画的に設立し、計画的に運用してやればその程度のデメリットは微々たるものだと思います。

合同会社とは?

合同会社とは?

合同会社は、平成18年に施行された会社法により創設された新しい会社形態です。近年は新規に設立される法人の約2割を占める程度に普及しており、その利用は拡大の一途をたどっています。この投稿ではこれから法人の設立を検討している経営者が知っておくべき合同会社に関する知識を紹介しています。

【合同会社の概略】

合同会社とは会社法が定める4つの会社のうちの一つをいいます。合同会社の出資者は社員と呼ばれ、基本的に合同会社を経営します。つまり、会社の所有と経営が一致します。合同会社では社員(=出資者=経営者)の個性が重視され、人的信頼関係に基づいて会社は運営されます。具体的には定款で会社の運営ルールを定め、意思決定は組合的規律が適用されます。その結果として、意思決定が迅速となり、機動的・効率的な会社経営が可能となります。また、法人格を有するため、普通法人として法人税の対象となります。つまり、税務的には株式会社と同じ扱いを受けます。

【株式会社との比較】

合同会社と株式会社とを比較してみると合同会社の特徴が良く分かります。

<設立>

合同会社は、定款を作成し、出資金を払込み、設立登記をして設立します。社員は一人でも設立することができますし、資本金1円でも設立できます。合同会社の定款は公証人による認証が不要なため、その手間と費用が省けます。設立に関する株式会社との比較は次の通りです。

 

合同会社

株式会社

出資者の最低人数

1人

1人

出資者の責任

間接有限責任

間接有限責任

出資の目的

金銭その他財産

金銭その他財産

出資の最低金額

1円

1円

ペーパー定款の印紙税

40,000円

40,000円

電子定款の印紙税

0円

0円

定款の認証費用

0円

50,000円

設立登記の登録免許税

60,000円

150,000円

出資者の最低人数・責任、出資の目的・最低金額に関して合同会社と株式会社とに違いはありません。一方、設立に係る費用は合同会社60,000円~、株式会社200,000円~と、合同会社の方が手軽に設立できます。

<運営>

 

合同会社

株式会社

役員の任期

なし

あり(最長10年)

決算公告義務

なし

あり

会社機関の設置義務

なし

株主総会、取締役

会社の自治

定款・組合的規律に基づく自治

法律に基づく自治

配当に係る純資産額規制

なし

あり

株式会社の役員には任期があるため、任期満了時には重任登記が必要です。重任登記を怠ると100万円以下の過料が科されます。さらに重任登記を失念して休眠会社となるとみなし解散制度が適用されることもあります。合同会社の役員には任期がないため、そういう手間もコストもリスクもありません。

株式会社は計算書類の決算公告義務があります。決算公告を怠ると100万円以下の過料が科されます。合同会社には決算公告義務がないため、そういう手間もコストもかかりません。

株式会社は、会社の機関として株主総会と取締役を設置する義務があり、会社の意思決定の手続きが法律で定められています。合同会社には会社の機関を設置する義務はなく、会社の意思は原則として社員の過半数で決定します。法律で定められた手続きが不要なため、迅速な意思決定が可能です。

株式会社は法律に基づく自治が求められるのに対して、合同会社は定款に基づく自治、あるいは、組合的規律に基づく自治が認められています。その結果として、意思決定が迅速で機動的・効率的な会社経営が可能となります。

株式会社は純資産額が300万円を下回る場合には配当ができませんが、合同会社にはそういう規制はないため、配当政策の自由度が高いといえます。

合同会社と株式会社を比較してみると、合同会社は株式会社より設立コスト・運営コストが低く、経営の自由度が高い会社形態だとご理解いただけると思います。

【運営していく上で知っておくべき基本的事項】

次に、合同会社を実際に運営していく上で知っておくべき5つの基本的事項を紹介します。

<合同会社の義務>

合同会社の義務として知っておくべき基本的事項は3項目あります。

(会計帳簿を作成・保存する義務)

仕訳帳・総勘定元帳などの会計帳簿を作成し、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、保存する義務

(計算書類を作成・保存する義務)

貸借対照表・損益計算書などの計算書類を作成し、作成した時から10年間保存する義務

(税務申告・納税をする義務)

事業年度終了後2カ月以内に税務申告・納税をする義務

 

合同会社は、帳簿と決算書を作成し、税務申告・納税すれば義務を全うします。株主総会を招集して株主の承認を得る必要もなければ、議事録を作成する必要もありません。

 

<社員の義務>

社員の義務として知っておくべき基本的事項は2項目あります。

(善管注意義務)

業務を執行する社員は、善良な管理者の注意をもって、その職務を行う義務。

(忠実義務)

業務を執行する社員は、法令及び定款を遵守し、合同会社のため忠実にその職務を行う義務

 

いずれも理念的な行動規範です。

 

<社員の責任>

社員の責任として知っておくべき基本的事項は4項目あります。

(合同会社の債務を弁済する責任)

社員は、合同会社の財産をもってその債務を完済することができない場合には、出資の価額を上限に、連帯して、持分会社の債務を弁済する責任を負います。

(合同会社に対する任務懈怠の責任)

業務を執行する社員は、その任務を怠ったときは、合同会社に対し、連帯して、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。

(第三者に対する損害賠償責任)

業務を執行する社員がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、その社員は、連帯して、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負います。

(違法な出資払戻額・持分払戻額を返済する責任)

合同会社が違法な出資の払戻し・持分の払戻しをした場合には、その業務を執行した社員は、合同会社に対し、出資・持分の払戻しを受けた社員と連帯して、その出資・持分払戻額に相当する金銭を支払う義務を負います。

 

任務を怠ったり、第三者に迷惑を掛けたり、違法な出資・持分の払戻しをしなければ、出資の価額が責任の上限となります。合同会社の社員の責任が間接有限責任といわれる所以です。

 

<社員の権利>

社員の権利として知っておくべき基本的事項は6項目あります

(業務及び財産の状況を調査すること)

社員は、事業年度の終了時又は重要な事由があるときに、合同会社の業務及び財産の状況を調査することができます。

(計算書類の閲覧又は謄写の請求)

社員は事業年度の終了時に、計算書類の閲覧又は謄写の請求をすることができます。

(利益の配当を請求)

社員は、合同会社に対し、利益の配当を請求することができます。

(出資の払戻しを請求)

社員は、合同会社に対し、既に出資として払込み又は給付をした金銭等の払戻しを請求することができます。

(任意退社)

各社員は、やむを得ない事由があるときは、いつでも退社することができます。

(持分の払戻しを受ける)

退社した社員は、その出資の種類を問わず、その持分の払戻しを受けることができます。

 

一人社員の場合は意識する必要のない権利ばかりですが、社員が複数いる場合は、主宰する社員以外の社員も上記の権利を有することを意識しておいたほうが良いでしょう。

 

<会社債権者の権利>

会社債権者の権利は5項目あります。

(計算書類の閲覧又は謄写の請求権)

合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内は、いつでも、その計算書類の閲覧又は謄写を請求することができます。つまり、仕入先や銀行から決算書のコピーを請求されたら拒むことはできないということです。計算書類は事業運営の結果をまとめたものなので、仕入先や銀行から計算書類を請求されることを前提にして事業運営を行う心構えが必要です。

(資本金の減少に関する異議)

合同会社が資本金の額を減少する場合には、合同会社の債権者は、合同会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができます。合同会社は債権者保護手続きを経たうえで資本金を減少することができますが、債権者から異議を述べられた場合はその債権を返済しなければなりません。

(違法な利益配当に関する求償権)

合同会社の債権者は、違法な利益の配当を受けた社員に対し、債権額を上限として、配当額に相当する金銭を支払わせることができます。

(違法な出資払戻しに関する求償権)

合同会社の債権者は、違法な出資の払戻しを受けた社員に対し、債権額を上限として、出資払戻額に相当する金銭を合同会社に支払わせることができます。

(持分の払戻しに関する異議)

持分払戻額が剰余金額を超える場合には、合同会社の債権者は、合同会社に対し、持分の払戻しについて異議を述べることができます。合同会社は債権者から異議を述べられた場合はその債権を返済しなければなりません。

 

会社内部の自治は定款・組合的規律による柔軟な運営ができますが、会社外部の債権者に対する義務、責任は法律に従うことになります。つまり、合同会社の債権者に対する義務、責任は株式会社のそれと変わりません。

【定款自治とは】

合同会社は定款自治による運営が認められているので経営の自由度が高いといいました。定款自治とは、定款の定めに基づいて会社が運営されるということであり、仮に会社法の規定とは異なる取決めであっても、それに基づいて会社運営できるということです。具体的には次のような取決めができます。

(業務の決定方法)

会社法では「社員が二人以上ある場合には、合同会社の業務は、社員の過半数をもって決定する」と規定されていますが、別段の定めをすることができます。

(業務を執行する社員の辞任)

会社法では「業務を執行する社員は、正当な事由がなければ辞任することができない」と規定されており、正当な事由があれば辞任できると解釈できますが、別段の定めをすることができます。

(業務を執行する社員の報告義務)

会社法では「業務を執行する社員は、合同会社又は他の社員の請求があるときは、いつでもその職務の執行の状況を報告し、その職務が終了した後は、遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない」と規定されていますが、別段の定めをすることができます。

(持分の承継について)

会社法では「合同会社は、社員が死亡した場合におけるその社員の相続人がその社員の持分を承継する旨を定款で定めることができる」と規定しています。社員が欠けたことは解散事由に該当するため、一人社員合同会社の場合は定款に定めが必要となります。

(計算書類の閲覧又は謄写の請求権)

会社法では「合同会社の社員は、当該持分会社の営業時間内は、いつでも、計算書類の閲覧又は謄写の請求をすることができる」と規定されていますが、別段の定めをすることができます。ただし、「定款によっても、社員が事業年度の終了時に同項各号に掲げる請求をすることを制限する旨を定めることができない」と規定されているので、整合性を保つ必要があります。

(利益の配当)

会社法では「合同会社は、利益の配当を請求する方法その他の利益の配当に関する事項を定款で定めることができる」と規定されています。会社法には何ら規定がないため定款に定める必要があります。

(損益の分配)

会社法では「損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める」と規定されています。つまり、定款に定めてやれば別の割合を損益分配の割合とすることができるということです。

(出資の払戻し)

会社法では「合同会社は、出資の払戻しを請求する方法その他の出資の払戻しに関する事項を定款で定めることができる」と規定されています。会社法には何ら規定がないため定款に定める必要があります。

(定款の変更)

会社法では「合同会社は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって、定款の変更をすることができる」と規定されています。定款自治が認められている合同会社にあって定款変更は重要性が高い項目ですが、定款で別段の定めができるほど定款自治が徹底しています。

(存続期間)

会社法では「合同会社は、定款で定めた存続期間の満了によって解散する」と規定されており、その存続期間を定款で定めることができます。

(解散事由)

会社法では「合同会社は、定款で定めた解散事由の発生によって解散する」と規定されており、その解散事由を定款で定めることができます。

 

合同会社は定款をカスタマイズすることが前提となっている会社形態です。実際、何もカスタマイズせずに会社法の規定だけで運用すると不都合が生じます。例えば、業務は社員の過半数で決定しますが、賛否同数の場合は業務が停滞することになります。また、一人社員の場合に持分承継に関する定めがなければ、一人社員の死亡と同時に合同会社は解散することになります。

ネット等から必要最低限の定款を入手して合同会社を設立するのは相応のリスクが伴います。定款は合同会社を設立するために作成するのではなく、合同会社を円滑に運営するために作成すると認識したほうが良いでしょう。さらに言えば、合同会社を主宰する人にとって都合のよい定款を作成することも可能です。定款自治を最大限に活用することが合同会社を使いこなす鍵といえるでしょう。

【合同会社と株式会社の選択】

最後に、合同会社と株式会社のどちらを選択すれば良いか迷っている読者もいると思うので、その点について私見を述べたいと思います。

合同会社が株式会社より優れている点は、設立・運営が手軽である上に、税法上は株式会社と同じ扱いを受けることだと思います。

一方、合同会社は株式会社より信用力が低いとよく言われますが、私は別の見解を持っています。

信用力の本質は、資金力・収益力・ガバナンス体制の3つです。資金力は資本金の大きさで規定され、収益力は利益の大きさで規定されます。ガバナンス体制は内部牽制機能の有無や働き具合で規定されます。

つまり、資本金が50万円の株式会社より資本金300万円の合同会社の信用力が高く、赤字の株式会社より黒字の合同会社の信用力が高いのは異論のないところです。債権者は履歴事項全部証明書や計算書類で資本金や利益を確認することができるので、この点で合同会社が不利とは言えません。

ガバナンス体制に関しては、会社形態として株式会社が合同会社に優るのは事実です。しかし、中小規模の株式会社においてガバナンス体制はない、というのが世間一般の常識です。ワンマン社長が支配し、株主総会を開催したこともなく、決算公告をしたこともない株式会社は少なくありません。つまり、この点に関しても合同会社が必ずしも不利とは言えないと思います。さらに、ガバナンス体制を担保する取決めを定款で定めることで解決できる問題だと思います。

唯一、合同会社が株式会社より劣る点は、合同会社は会社形態としての知名度が低いため、人材採用に関しては不利だと思います。AmazonやGoogleなど企業ブランド力のある合同会社でなければ、人材が集まりにくいのが実際だと思います。

これらを総合すると、合同会社は、一人もしくは仲間で運営する場合やファミリービジネスに最適な会社形態だと思います。

店舗のレジ更新費用に補助金を活用しましょう

消費税の軽減税率対策は済みましたか?

平成31年10月1日、消費税の標準税率が10%に引き上げられることに伴い8%の軽減税率が導入されるのはご存知かと思います。

軽減税率の対象となる主な商品は、食品表示法に規定される食品です。

例えば、お酒以外の飲料、精肉、青果、鮮魚、弁当、ハンバーガーなどが軽減税率の対象となります。

飲食料品だけを取り扱っている店舗は単一税率で販売すればよいので今までと変わらないですが、飲食料品以外の商品も取り扱っている店舗は軽減税率の商品と標準税率の商品を区別して販売することになります。

また、テイクアウトは軽減税率(8%)ですがイートインは標準税率(10%)となりますので、両方の販売形態を採用している店舗もそれぞれ区別して販売することになります。

ここで問題となるのはレジシステムだと思います。従来のレジシステムは複数税率に対応していないため、飲食料品を取り扱っている店舗のほとんどがレジシステムを更新する必要があります。

レジシステムの更新には費用が掛かりますが、消費税軽減税率制度への対応が必要となる中小企業・小規模事業者が複数税率対応レジを導入する場合には、その費用の一部を補助する制度があります。

補助金の上限はレジ1台あたり20万円、1事業者あたり200万円までとなっています。

また、補助率は原則2/3、3万円未満のもの1台購入の場合は3/4、タブレット等の汎用端末は1/2となっています。

詳しくは、軽減税率対策補助金事務局を参照して下さい。

なお、この補助金は平成30年1月31日までに導入完了したものが対象となっていますので早めに検討したほうがよいでしょう。

申請手続きは販売店が代行しているようですので、例えばモバイルPOSシステムを導入予定でタブレット等を購入予定の方はビックカメラなどに相談してみてください。

<せどりの経営管理塾 no.6> まとめ

せどりの経営管理法をまとめると次のようになります。 

①帳簿はクラウド会計ソフトを利用して作成する
②月次決算をする
③金融機関から資金調達をする
④経営戦略を立てる

たったこれだけで自分の思い描く人生が実現します。あとは実践あるのみです。今回の投稿が少しでも皆さんのお役に立てるのなら嬉しく思います。

<せどりの経営管理塾 no.5> 経営戦略を立てましょう

 経営戦略というと難しく聞こえますが、要は意図的に稼ぐための作戦のことです。例えば次のような感じです。

① 目標売上高

 過去のデータがあれば、季節変動を含んだ目標とすべき売上高の設定が可能です。「去年の4月はこれだけ売れたのだから、今年の4月はこれくらい売ってやる!」と目標を定めると実現する可能性は高まります。

② 目標仕入高

 目標売上高が定まれば、目標仕入高も自然と定まります。如何に仕入れるかがせどりの重要課題ですから、最も重要な目標となります。

③ 仕入ルートの開拓目標

 従来の仕入ルートだけで目標仕入高に届かない場合は、新たな仕入ルートを開拓するなどの手段が必要となります。不足金額がはっきりしているため、商品の選択や仕入先の検討に迷うことはありません。

④ 仕入方針の決定

 仕入はせどりの重要課題ですから、仕入方針は最も重要な作戦だといえます。そして、仕入方針ほど経営者の性格が表れるものはありません。

 リスク中立的な経営者は資金効率を重視することなく、例えば一定金額以上の利益などで仕入判断します。その場合、仕入に踏み切る見込利益の基準を定める必要があります。例えば1商品当たり5,000円以上の利益が見込める商品を仕入れる、などです。

 一方、リスク回避的な経営者は資金効率を重視します。その場合、仕入に踏み切る見込利益率の基準を定める必要があります。例えば仕入原価に対して20%以上の利益が見込める商品を仕入れる、などです。

 それぞれに一長一短がありますから善し悪しの判断はできませんが、自分の勝ちパターンでブレずに仕入判断できるような基準を定めることが重要です。仕入方針にブレがあると安定して稼げないからです。

 第3回の投稿で皆さんに月次決算を勧めましたが、月次決算で作った帳簿を業績判断だけに使うのは勿体ないです。むしろ、月次決算で帳簿を作る究極の理由は経営戦略の策定にあります。

 経営戦略は事業の成長を加速させます。また、判断のスピードが上がって時間的な余裕が生まれます。時間的な余裕をもってせどり事業を成長させる作戦が経営戦略なのです。

<せどりの経営管理塾 no.4> 資金調達をしましょう

 皆さんがせどり事業の成長を望むなら金融機関からの資金調達を検討すべきです。

 皆さんの多くはクレジットカードで仕入をしていると思います。この場合、カード枠合計の約半分で月間売上高が頭打ちになります。例えば、カード枠の合計が300万円であれば、月間売上高は150万円が上限となります。クレジットカードの利用から決済までの1クールが2カ月だからです。

 せどりは売れると分かっている商品を仕入れる事業モデルですから、より多くの商品を仕入れるほど売上と利益が増加します。しかし、商品仕入をクレジットカードだけに依存している場合は、カード枠の制限が掛かります。皆さんには売れると分かっている商品をカード枠が足りずに仕入れられなかった経験はないでしょうか?

 この問題を解決するためにカード枚数を増やすのは一つの手段です。しかし、カード枚数を増やせば利用枠の管理や決済に手間と神経を使います。せどり事業では仕入に全精力を注ぎたいですから、カードの増やし過ぎは避けたいところです。

 また、クレジットカードは短期資金です。仕入れてから実質1カ月以内に売り切って決済しないと資金ショートを起こします。あと1~2カ月あれば売れる見込みがある商品を資金決済のために処分価格で売り切るのは勿体ない話です。

 この問題を解決する根本的な方法は、金融機関から資金調達することです。現金ほど管理が楽で融通が利く決済手段はありません。また、長期資金なので利幅が大きく販売に時間が掛かる商品など仕入の選択肢が広がります。さらに、現金決済は格安で商品を仕入れるための交渉材料にもなりますから一石二鳥です。

 せどりを事業として行い、事業を成長させたいと望むなら、金融機関から資金調達するのは自然な流れです。

 「金融機関は小規模な事業者など相手にしてくれないのでは?」と考えがちですが、例えば、政府系金融機関は小規模で創業間もない事業者を対象とした制度融資が充実しています。政府は開業率を5%から10%に引き上げるため新規融資に積極的な姿勢ですから、それほど敷居が高いと身構える必要はありません。

 さて、金融機関からの資金調達を検討する場合は、その融資判断の基準を知っておいた方がよいでしょう。

 個人事業主の場合、金融機関は基本的にその人の属性で融資判断します。属性とは年齢、性別、業種、業歴、資格、学歴、取引先、役職など、その人一身に備わっている性質のことです。

 その大枠の中で担保や保証の有無、預金取引の状況、財務状況や収益状況を加味して最終的な融資判断をおこないます。

 また、税理士関与がある場合とない場合とで実務的には資金調達できる金額に差が出ます。

 税理士関与がない場合、金融機関は帳簿を全く信用していません。なので、属性・保証・担保の範囲内で安全を見た消極的な融資にならざるを得ません。そのため、希望額に満たない金額しか資金調達できないことがほとんどです。

 一方、税理士関与がある場合、金融機関は帳簿に一定の信頼を置いています。さらに、月次決算など計数管理ができている場合は、属性・保証・担保の範囲内で最大限融資する姿勢に変わります。

 私の経験を紹介すると、創業から約半年、関与開始から約2カ月の顧問先が無担保無保証の制度融資を受けられました。希望通りの数百万円でした。せどり仲間の中では自分だけだったそうです。

 私の顧問先が融資を受けられたのには理由があります。月次決算をして情報開示を徹底したことと、融資が必要な理由や事業の見通しなど融資返済までのストーリーを具体的な数字でしっかり示せたことがそれです。

 資金調達に税理士関与は必ずしも必要ではありませんが、資金調達に限界を感じているなら税理士関与を検討しても良いでしょう。