カテゴリー別アーカイブ: 財務戦略の考え方

財務戦略の考え方「最終まとめ」

規模の利益は統計的な事実であり、規模の利益を追求することは企業にとって当然の選択です。一方、財務的な破綻を回避するため、規模に見合った資金力を確保することは企業にとって当然の義務です。

ここで、規模とは総資本のことであり、 資金力とは自己金融能力のことを指します。

総資本と自己金融能力はトレードオフの関係にあるため、規模と資金力は自然の流れではバランスしません。規模と資金力をバランスさせるには、財務的に合理的な意思決定・計画 = 財務戦略が必要です。

財務戦略の策定プロセスには、静的な分析と動的な分析の2つの機能が必要です。そして、財務戦略の策定プロセスには、信用リスクの測定と財務指標分析の2つのツールが必要です。

財務戦略の考え方「財務指標分析」

財務指標分析は4つの比較分析からなります。

借入金依存率が60%を超えるとデフォルト確率が急激に高まるという統計な事実がありますが、このような統計的な事実と比較分析する方法が一つです。

流動比率は100%以上ないと不合理という理論がありますが、このような理論と比較分析する方法が一つです。

業種平均との比較分析が一つです。自社の財務的な強み・弱みを分析することで事業計画の立案や経営革新に役立てることができます。

自社時系列との比較分析が一つです。業績や信用リスクのトレンドを把握したり、財務的な異常値の発見に役立ちます。

財務戦略の考え方「信用格付のスキルの価値③」

4番目の新しい価値は、財務改善を自己完結できる点です。

近年、金融庁はリレーションシップ・バンキングを推進するように銀行を指導しています。リレバンとは、地域密着型金融のことであり、取引先企業と連絡を密に取ることによって取引先企業の実態やニーズを把握するなど、銀行の目利き力を高める狙いがあります。銀行は、リレバンの一環として取引先企業の財務改善支援を行わざるを得ない状況となっています。

一方、経営者にとって銀行主導の財務改善にはジレンマがあります。立場の強い銀行に経営の主導権を握られることには抵抗感が強いのではないでしょうか。また、「銀行管理」のレッテルを貼られることを経営者は最も恐れています。風評被害を受けるかもしれないからです。

銀行並みに信用リスクを測定するスキルがあれば、銀行に頼る必要はありません。経営の自由度を確保しながら財務改善を自己完結することは可能です。

財務戦略の考え方「信用格付スキルの価値②」

図をご覧になって下さい。

図は信用格付の年度推移を折れ線グラフにしたものです。赤は自社、黒は業種平均を表しています。信用リスクが数値化されているため、業種平均との優劣がはっきり分かります。また、自社時系列での優劣を明確に判断することができます。この点が2番目の新しい価値です。

さらに、業種平均は景気変動を映す鏡と考えることで、より有効な検証ができます。他社並みの経営努力をしている場合は業種平均に沿って自社の信用リスクも変動するはずです。一方、業種平均に逆らって変動する場合は何らかの原因があると考えるのが自然です。その「何らかの原因」を検証することが経営革新のきっかけとなる可能性あります。

先述したように業種平均の統計データは1~2年遅れであるため、5年以上の中長期的なデータの蓄積が必要となりますが、経営革新のきっかけとなり得ることが3番目の新しい価値です。

財務戦略の考え方「信用格付スキルの価値①」

信用リスクを測定するスキルは、新しい価値を提供することができます。

最初の価値は、業種平均と比較分析することなく、自社の最新データを用いて財務内容の良否を直接判定できる点です。

従来の、業種平均と比較分析して財務内容を間接的に良否判定することには、2つの問題点があります。図1をご覧になって下さい。業種平均の統計データは1~2年遅れであるため、自社の最新データと単純比較できません。背景となる事業環境が異なるからです。

また、図2・図3をご覧になって下さい。業種平均の信用リスク水準は業種ごとに異なるだけでなく、同業種であっても毎年のように変動します。業種平均が要注意先に格付されている場合もあり、業種平均が目標になるとは限りません。業種平均の信用リスクを把握した上で比較分析しなければ、経営判断を誤ることもあります。

財務戦略の考え方「判別値が分類される格付とは」

信用格付の定義をご覧になって下さい。

信用格付6の定義は、「債務履行の確実性が先行き十分とはいえない・事業環境が変化すれば履行能力が損なわれる可能性がある・業況推移に注意を要する」となっています。つまり、デフォルトと判別するよりも非デフォルトと判別することに合理性があります。よって、判別値 k をこのカテゴリーに分類することは不合理です。

信用格付8の定義は、「業況、財務内容に重大な問題がある・債務の履行状況に問題が発生しているかそれに近い状態」です。このカテゴリーはデフォルトと判別することに合理性があります。

しかし、判別値 k を信用格付8に分類すると、信用格付7のカテゴリーは全て非デフォルトと判別されることになります。信用格付7の定義は「業況、財務内容に問題がある・債務の履行状況に支障をきたす懸念が大きい」です。全てを非デフォルトと判別するには抵抗があります。一方、デフォルトとも判別しにくい状況です。

以上のことから、判別値 k は信用格付7のどこかに分類されると考えるとぴったり符合します。

信用格付の基準点が定まれば、相対的な順位に対応する格付スコアを設定してやることで、継続企業群の信用格付が可能となります。

財務戦略の考え方「判別値の意味」

次にデフォルトと非デフォルトを区分する判別値 k の意味を詳しく説明します。

図は、デフォルト企業群と継続企業群の格付スコアの分布です。横軸が格付スコア、縦軸が企業数を表しています。

判別値 k は、デフォルト企業群の格付スコアよりもできるだけ大きく、かつ、継続企業群の格付スコアよりもできるだけ小さい値として統計的に求められます。その結果、デフォルト企業群の86%が格付スコア<k 、かつ、継続企業群の75%が格付スコア≧k となる値が判別値 k として設定されています。判別率は80%と高い水準です。

注目すべきなのは、継続企業群の分布と判別値 k の関係です。継続企業群の25%は判別値 k によってデフォルトと判別されているにもかかわらず、実際にはデフォルトしていません。このことは、財務内容が悪化しても実際にはすぐにデフォルトするわけではないことを意味しています。この事実をもとに、判別値 k を信用格付の定義に分類してやれば、デフォルト判別モデルと信用格付を関連付けることができます。

財務戦略の考え方「信用格付モデルの概要」

当事務所が採用している信用格付モデルの概要を説明します。

当事務所のモデルは、デフォルト判別モデルがベースとなっています。デフォルト判別モデルとは、デフォルトと非デフォルトを判別するモデルのことで、○×の2区分に信用格付する財務定量モデルです。

デフォルト判別モデルでは、自己金融能力を表す財務指標を統計モデルに代入し、格付スコアを算定します。そして、格付スコアが判別値 k より小さい時にデフォルトと判定します。

判別値 k は統計的に高い確率でデフォルトと非デフォルトを区分する値のことです。

このデフォルト判別モデルは信頼性の高いモデルです。

財務戦略の考え方「財務戦略の策定プロセスに必要なスキル」

財務戦略の策定プロセスには、信用リスクを測定するスキルと財務指標分析のスキルが必要です。

規模と資金力をバランスさせるためには自己金融能力を測定しなければなりません。自己金融能力の測定には、銀行や格付機関と同様に信用格付するスキルが必要です。つまり、信用リスクを測定するスキルが必要です。

信用リスクを測定するスキルは財務内容をマクロ的に分析することができるスキルです。その結果、財務戦略の大局的な意思決定に明確な根拠を与えることができます。

一方、従来からある財務指標分析のスキルも財務戦略に必要です。財務指標分析は財務内容をミクロ的に分析することができるからです。その結果、財務戦略の目標設定や計画の方向性を探ることができます。

財務戦略の考え方「財務戦略の策定プロセスに必要な機能」

財務戦略の策定プロセスには、現状認識の機能と試行錯誤の機能が必要です。

現状認識は、財務戦略の局面判断に欠かせません。総資本に対する資金力が足りなければ財務改善する局面であり、総資本に対する資金力に十分な余力があれば成長戦略を検討する局面です。その局面判断を正確に行うことが財務戦略を策定するプロセスの第一歩です。

局面判断の次にやるべきことは、目標の設定です。目標の設定には、前提条件を変化させたタラレバの試算・検討が欠かせません。目標を実現するための条件が易しすぎても厳しすぎても最適な目標とは言えません。野心的でありながら現実的な目標を設定するには、仮説と検証を繰り返す必要があります。

目標の設定と同時にやるべきことは、目標を実現するための計画を考えることです。計画のポイントは、営業政策や生産政策など様々な経営要素を最適に組み合わせてやることにあります。ここでも、前提条件を変化させたタラレバの試算・検討が欠かせません。