節税の弊害


一般的に、租税負担を軽減させる政策を節税と呼びます。節税自体は納税者が適正納税を行う上で意義のある取組みですが、財務戦略上は弊害が伴うことがあります。

経営者の役員報酬を決める時、個人の所得税と会社の法人税を合計した租税負担が最小となるように設定する、という節税方法があります。個人と会社を一体と見なして、税引後のキャッシュを最大化するのが狙いです。一見、合理的な考え方ですが、会社のキャッシュを経営者の一存で自由に処分できるという前提がなければ成立しません。実際には個人と会社は法律上別人格であり、会社のキャッシュは事業目的に沿って利用処分しなければなりません。会社のキャッシュを事業目的以外に流用したときに想定される弊害は「個人と法人を分離する理由」で述べた通りです。会社のキャッシュを経営者の一存で自由に処分できると誤認させるような節税策には財務戦略上の弊害があるのです。

会社に必要な内部留保(安定資金、成長資金、設備投資資金等)を除いた余剰資金は可能な限り経営者個人に移転させるほうが財務戦略的には優れています。理論上、租税負担のロスが発生することがありますが、個人と会社を明確に分離する政策は、経営者が規律を守って会社経営を担っている証であり、会社の信用力を高める効果があります。

今後、法人税率は下がり所得税率は上がる公算が高まっています。顧問税理士から役員報酬を減額して租税負担を減らし、会社の内部留保を増やすように勧められるかもしれません。しかし、会社に留保されたキャッシュを経営者の一存で処分することには問題があります。会社に留保されたキャッシュをどのように処分するか、合理的な出口戦略を顧問税理士に確認してから採用したほうが良いでしょう。