資金調達と財務のスキル


資金調達には財務のスキルが必要です。それは、財務指標の改善や財務計画の立案が資金調達を左右するようになったからです。

金融検査マニュアルが導入される以前は、財務のスキルがなくても資金調達に問題はありませんでした。不動産担保や保証人が融資の根拠であったため、経営者は不動産や保証人を手配すれば資金調達できたからです。この仕組みは経理や財務に疎い経営者にも理解しやすく運用しやすい仕組みであったため、財務のスキルは重要ではなかったのです。

 

しかし、金融検査マニュアルが導入されてからは、融資の根拠が「企業の破たん確率(デフォルト確率)」に変わりました。デフォルト確率により企業を債務者格付し、債務者格付を根拠に融資を行うという、極めて複雑で難解な仕組みとなったのです。デフォルト確率は決算書の財務指標から推定するため、財務指標の優劣が不動産担保や保証人より重要になりました。また、銀行から事業計画や財務改善計画の提出を求められるようになり、それらの財務計画の優劣が資金調達を左右するようになったのです。つまり、財務のスキルが資金調達に不可欠となったのです。

そこで経営者は、財務のスキルを経理担当者に求めましたが、うまく機能しませんでした。その原因は、経理と財務が全く別のスキルだからです。

経理とは、過去の取引を正確に記録し、分類・集計する事務のことをいいます。つまり、資金がどのように使われたか管理することが経理のスキルです。

一方、財務とは、資金をどのように調達し、どのように使うか管理する事務をいいます。つまり、未来を計画することが財務のスキルです。

経理も財務も資金を管理するスキルですが、意識が全く異なっています。経理の意識は過去に向かっているのに対して、財務の意識は未来に向かっています。経理の延長線上に財務はありません。経理は財務の基礎的な要素ですが、経理の経験だけでは財務の訓練とはならないため、単なる経理担当者に財務のスキルを期待するのはそもそも無理があるのです。財務は未来を予想する行為であることを考えると、むしろ経営に近いからです。

財務に必要な資質があるとすればそれは経営マインドです。経営マインドとは、自ら問題意識を持ち、自ら情報収集し、自ら行動する意識のことです。そういう意味で財務のスキルを持った人材とは、経営マインドを持った経理担当者だといえます。

しかし、中小企業で経営マインドを持っているのは経営陣と一握りの従業員だけではないでしょうか。その他の多くの従業員は「できることだけをやるのが仕事」あるいは「言われたことだけをやるのが仕事」という意識を持っているように思えます。「できる方法を考える」とか「やるべきことを考えてやる」という意識は乏しいのが現実です。

また、中小企業の多くは、納税を目的とした必要最低限の帳簿を作成しているのが実情です。経理に重きを置かず、経理担当者には安い労働力を求めていることが多いのです。そういう状況では、経営マインドを持った経理担当者を望むことはできません。もちろん、経理の重要性に早くから気づき取り組んできた企業には経営マインドを持った経理担当者が存在し、その多くは役員として経営者を支えています。しかし、例外を除けば中小企業には財務のスキルを持った人材がほとんどいないのです。

現状として財務のスキルを持った人材がいない場合は、外部から調達するのが経営者の役割です。外部から調達する方法は次の2つが考えられます。

  • 財務経験者を採用する

  • 外部の財務専門家に依頼する

財務経験者を採用した場合、「知恵」「行動」「責任」を調達することができます。すなわち、経営者の意向に沿った財務戦略を立案し、銀行対応などの対外活動や財務戦略の周知徹底を図る社内活動に従事し、結果責任の一部を経営者と分かち合うこととなります。その分、報酬が高額となります。

外部の財務専門家に依頼する場合は、「知恵」を調達することができます。すなわち、資金調達に関するアドバイスや経営者の意向に沿った財務戦略を立案できます。「行動」は経理担当者に任せ、「責任」は経営者自らが取るならば、外部の財務専門家に依頼するのが合理的です。なぜなら「行動」や「責任」が伴わない分、財務経験者を採用するより割安な報酬となるからです。

経営者には、営業が得意で経理や財務が不得意な方も多いと思います。不得意な経理や財務に煩わされることなく、得意な営業に集中したほうが御社の業績にプラスに働くことは間違いありません。また、資金調達に不安を抱えるなかで経営を続けることは想像を絶するほどストレスになります。経営者の皆様が心安らかに経営に専念する意味でも財務のスキルを持った人材の確保が不可欠だと考えています。