ポートフォリオ・リバランス効果


平成25年4月から日銀が実施している「量的・質的金融緩和」の波及効果の一つに、「ポートフォリオ・リバランス効果」があります。量的・質的金融緩和で長期金利が低下すると、これまで長期国債で資金運用していた投資家や金融機関が株式や外債等へのリスク資産へ運用をシフトさせたり、金融機関が貸出を増やしたりする効果のことをいいます。

金融機関の貸出姿勢に関するポートフォーリオ・リバランス効果は「預貸率」で検証することができます。

預貸率 = 貸出金 ÷ 預金 × 100(%)

預貸率とは、国民から預かったお金を貸出に回した比率です。数値が大きいほど積極的な貸出姿勢といえます。早速、ポートフォリオ・リバランス効果が現れているかどうか検証してみましょう。

預貸率

平成25年4月~9月に関して、預貸率は68%台で変化が見られません。貸出額も405兆円前後とほぼ同じです。この半年間ではポートフォリオ・リバランス効果は現れていないようです。

次に、ここ20数年間の預貸率の経緯を見てみます。

預貸率(経緯)

平成5年に130%あった預貸率が、平成25年には68%台にまで低下しています。

さらに、国際的な預貸率の水準を見てみます。

銀行預貸率

平成23年のデータですが、ドイツ(92%)イギリス(87%)アメリカ(86%)に対して、日本は69%に留まっています。

預貸率の経緯と国際的な比較を勘案すると、現状の預貸率が異常に低く、金融機関が金融仲介機能の役割を果たしていないことがわかります。

 

平成25年9月、金融庁は「金融モニタリング基本方針」及び「中小・地域金融機関向け監督方針」を公表し、今事務年度の検査・監督方針を示しました。二つの方針は、金融庁が金融機関を検査・監督する上での基本方針です。(詳細は「金融モニタリング基本方針と監督指針」参照)

「中小・地域金融機関向け監督方針」では、監督重点分野として次のことが掲げられています。

 ・ 中小企業の経営支援をはじめとした積極的な金融仲介機能の発揮

また、「金融モニタリング基本方針」では、モニタリング手法の見直しとして次の2点が掲げられています。

 ・ 融資審査における事業性の重視
 ・ 小口の資産査定に関する金融機関の判断の尊重

預貸率が低迷する中、政府・日銀のデフレ脱却方針と成長戦略に後押しされる形で、金融庁が金融機関に信用リスクを積極的に取るよう促している構図が透けて見えます。この政策は、日銀がコミットしている2年間で2%のインフレ目標を達成するために避けては通れない政策です。金融機関は積極的に信用リスクを取るように努力し、中小企業は事業性を高めるように努力することがデフレ脱却のカギになりそうです。

 

 

ポートフォリオ・リバランス効果(H25/10~H26/1)

平成26年2月6日付の日経新聞一面に「融資 中小にも広がる 資金需要強く」という記事が載っていました。検証してみます。

預貸率2

平成26年1月末時点で、平成25年4月から預金が10兆円増加し、貸出が8兆円増加しています。同じ期間で信用金庫の貸出も7千億円増加しています。つまり、日銀の異次元緩和開始時点から8兆7千億円の貸出が増加したことになります。

預貸率こそ変化は見られないものの、「金融モニタリング基本方針(小口の資産査定に関する金融機関の判断の尊重)」に後押しされる形で銀行が融資姿勢を転換し、リスクを取り始めた兆候とも理解できる内容です。

今後の推移を慎重に見極める必要がありますが、日銀の異次元緩和政策が徐々に成果を表し始めているのではないでしょうか。