「絶対」概念と「比較」概念


リカードの比較優位論を理解する上で重要な概念があります。それは「絶対」概念と「比較」概念です。「比較優位論の骨子」の例を引き合いに解説してみます。

リカード3

ポルトガルは1人で1ℓのワインを生産できるのに対し、イギリスは1人で0.2ℓのワインしか生産できません。ワイン生産に関して、ポルトガルは絶対優位な立場にあるといい、イギリスは絶対劣位の立場にあるといいます。

また、ポルトガルは1人で0.5mの毛織物を生産できるのに対し、イギリスは1人で0.25mの毛織物しか生産できません。毛織物の生産に関して、ポルトガルは絶対優位な立場にあるといい、イギリスは絶対劣位の立場にあるといいます。

一方、ポルトガル国内では、ワインの生産効率が高いので、ワイン生産が比較優位の立場にあるといい、毛織物生産が比較劣位の立場にあるといいます。

また、イギリス国内では、毛織物の生産効率が高いので、毛織物生産が比較優位の立場にあるといい、ワイン生産が比較劣位の立場にあるといいます。

以上をまとめると次のようになります。

「絶対」概念 = 国家間の優劣

「比較」概念 = 国家間の優劣は無関係、国内での優劣

上の例では、ワイン生産と毛織物生産の両方に関してポルトガルが絶対優位の立場にあるため、直感的にはイギリスと貿易しても意味がないように思えます。しかし、ポルトガル国内で比較優位にあるワイン生産に特化し、絶対劣位にあるイギリスと貿易することでより豊かになれるのは「比較優位論の骨子」で解説した通りです。イギリスにとっても国内で比較優位にある毛織物生産に特化し、ポルトガルと貿易することでより豊かになることができます。

国家間の絶対的な優劣に関係なく、お互いの国家がそれぞれ比較優位な産業に特化して貿易すれば、双方がより豊かになれることを明らかにした点が、比較優位論の最も優れた点です。