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ABLのスキーム – 動産・債権譲渡登記制度

ABLのスキームの要である譲渡担保は、債務者(企業)が動産や債権の占有を継続したまま所有権を債権者(金融機関)に譲渡する、いわゆる占有改定によって設定されます。占有改定は第三者から見ると判然としない公示方法であるため、占有改定の有無、先後をめぐって紛争を生じる恐れがあり、動産や債権を活用した資金調達を妨げる一因となっていました。

こうした問題に対応するため、平成10年10月に債権譲渡登記制度、平成17年10月に動産譲渡登記制度が創設されました。

動産・債権譲渡登記制度は、債権者(金融機関)が有する譲渡担保の権利について、他の利害関係人に対して排他的にその優先権を主張するための制度です。法律的には「担保権について第三者対抗要件を具備するための制度」ということになります。

動産・債権譲渡登記制度に関して債務者(企業)が知っておくべきことがあります。

まず、登記事項の概要証明書は誰でも取得できるため、動産・債権に担保権が設定されている事実が風評被害を招くなどの恐れがある場合は、ABLの利用を慎重に検討する必要があります。金融機関によっては、登記を保留したままABLに取組むケースもありますので、金融機関と十分に相談することが重要です。

また、債務者(企業)が売掛先と債権譲渡禁止特約を結んでいる場合は債権譲渡登記できないため、ABLの取組みの支障となることがあります。

さらに、債権者(金融機関)が債務者(企業)の売掛先に対して対抗要件を具備するためには、債権譲渡登記に加えて売掛先に通知する必要があります。債務者(企業)の取引に支障が生じる恐れがある場合は、ABLの利用を慎重に検討する必要があります。金融機関によっては、通知を保留したままABLに取組むケースもありますので、金融機関と十分に相談することが重要です。

ABLのスキーム – 譲渡担保

ABLのスキームの要となっているのが、譲渡担保です。ここではABLのスキームに関する一般的な譲渡担保について解説します。

譲渡担保とは、債権者(金融機関)が債務者(企業)への融資を担保する目的で、動産や債権の所有権を法律形式上譲り受ける担保手法をいいます。債務者が債務を弁済したときには所有権が債務者に戻りますが、弁済できない場合は所有権が確定的に債権者に帰属します。

債務者(企業)は、譲渡担保を設定した動産や債権を引き続き支配・管理し(いわゆる占有改定の状態)、使用・収益することができます。次に掲げるような、通常の営業の範囲内で動産を処分し、債権を回収することができます。

  • 原材料・仕掛品を加工・組立することができる

  • 在庫商品を販売・収益できる

  • 機械設備を使用できる

  • 売掛金を回収し、運転資金に充当できる

譲渡担保が設定された商品を購入した取引先は、譲渡担保の拘束を受けることなく確定的に所有権を取得することができます。ただし、通常の営業の範囲内での購入に限られます。

製造・販売を目的とした原材料や在庫商品など、日々内容が変動する集合動産(流動的動産)は、動産の種類ごとに指定された動産の保管場所(倉庫等)によって譲渡担保を設定します。この場合、指定された保管場所にある同じ種類の動産の全てが担保となり、指定された保管場所に搬入された時点で譲渡担保となります。

債務者(企業)が使用している機械設備などの個別資産は、動産の種類と特質(製造番号など)で資産を特定し、譲渡担保に供します。

債権は、特定された多数の債権を一個の集合した債権(集合債権)と捉えて、それに譲渡担保を設定します。集合債権の譲渡担保は、取引先(債務者)が特定されていない将来債権にも設定することが一般的です。

因みに、譲渡担保の設定は形式的とはいえ法律上の所有権が移転するため、法人税の課税関係が気になるところです。しかし、明らかに借入れのための担保の提供と認められる譲渡担保については、その譲渡がなかったものと取り扱われます。(法人税基本通達2-1-18準用)

ABLの意義・位置づけ

不動産担保や個人保証に過度に依存した旧来型の融資手法では、中小企業の資金調達、特に成長企業の資金調達をサポートすることの限界が強まっています。

  1. 年一回の自己査定で中小企業の資金調達力(貸出上限、金利等)が決められるため、それから1年間の増加運転資金需要に対して、必ずしも柔軟に対応できないケースがある。

  2. 不動産価格の上昇が必ずしも約束されていない時代となり、成長企業の資金需要に不動産担保が追いつかないケースがある。

  3. 個人保証は個人の財産に依存した保全であるため、そもそも担保力としては大きな金額を望めない。

  4. 金融機関の融資スタンスは、不良債権を抑制する観点から景気変動に敏感に反応するため、景気後退期に成長する企業の資金需要に応えることが難しい。

 

そのため、中小企業の有する動産・債権等の資産の活用や、事業が生み出すキャッシュフロー、事業の将来性に基づいた資金調達手法など、融資手法の多様化が課題となっています。

ABLは、事業収益資産に着目し、これを評価・管理し、柔軟に与信枠を設定する融資手法です。ABLには、個々の企業の事業規模や収益性に応じて、成長のために必要な資金量の確保を含めて、随時・安定的な資金調達を可能にするというメリットがあります。

米国ではABLが非常に普及しており、平成16年末のデータで総借入残高1兆9436億ドルに対してABL残高3621億ドルと19%を占めています。日本においても米国並みにABLが普及するとすれば、ABLの潜在的市場規模はおよそ78兆円と試算されています。

平成25年4月、日銀は2年で2%の物価上昇目標を掲げ、量的・質的金融緩和を実施しました。この政策は、ポートフォリオ・リバランス効果を期待したものでしたが、平成25年9月時点の銀行預貸率は上昇の兆しを見せておらず、銀行が中小企業への貸出に慎重な姿勢を継続していることが伺われます。ABLのスキームは、中小企業への貸出を増加させるための一つの処方箋であることから、今後、政府・日銀の強い後押しを受ける形でより一層の活用が見込まれます。