① 正常な運転資金
正常な運転資金とは、正常な営業を行っていく上で恒常的に必要と認められる運転資金をいい、算式で示すと次のようになります。
正常な運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務
「要管理債権に該当する要注意先」に関しては、全ての企業に正常な運転資金の調達が認められるわけではなく、債務者の状況に応じた個別判断によってその可否が判断されます。つまり、個別判断で正常な運転資金の調達が認められない場合は、自己資金で通常の営業活動を行わなければならない状態に陥ります。
② 優良保証付の資金調達
次に掲げる優良保証を付けられる場合は、その保証金額を上限として資金調達することができます。しかし、優良保証は資金調達の入り口で利用するケースがほとんどであり、「要管理債権に該当する要注意先」に区分された後で新規の優良保証を付けることはほぼ不可能だといえます。
・公的信用保証機関の保証
・金融機関の保証
・複数の金融機関が共同して設立した保証機関の保証
・地方公共団体と金融機関が共同で設立した保証機関の保証
・上場かつ有配会社等の保証契約に基づく保証
③ 優良担保の処分可能見込額
次に掲げる優良担保を担保提供できる場合は、優良担保の評価額に掛け目を乗じた処分可能見込額が資金調達力の一つと考えられます。
(優良担保)
・預金
・満期返戻金のある保険
・国債等の信用度の高い有価証券 など
(評価額)
・客観的、合理的な評価方法で算出した時価
(掛け目)
・国債 評価額の95%
・政府保証債 評価額の90%
・上場株式 評価額の70%
・その他の債権 評価額の85%
④ 特定の返済財源
概ね1か月以内に、増資や社債発行、不動産の売却、他金融機関からの借入金などによる財源を調達できる場合は、その特定財源が資金調達力の一つとして考えられます。
「正常先」や「正常債権に該当する要注意先」では、一般担保や一般保証を拠り所として資金調達をすることができます。「正常先」や「正常債権に該当する要注意先」に対する債権はⅠ分類債権であり、貸倒引当金をほとんど積まなくていいからです。しかし、「要管理債権に該当する要注意先」は一般担保や一般保証を拠り所として資金調達をすることができません。一般担保や一般保証を拠り所とした場合でも「要管理債権に該当する要注意先」に対する債権はⅡ分類債権であり、30%~50%の貸倒引当金を積まなければならないため、融資に合理性がないからです。
「正常先」及び「正常債権に該当する要注意先」と、「要管理債権に該当する要注意先」では、資金調達力の面で雲泥の差が生じます。中小企業の経営者はこの点をしっかり理解して「要管理債権に該当する要注意先」以下に区分されないように財務をコントロールしなければなりません。
一方、「要管理債権に該当する要注意先」に区分された企業は、一刻も早く「正常債権に該当する要注意先」以上にランクアップしなければなりません。それに必要な道筋は「卒業基準」として用意されています。数年程度は辛抱しなければなりませんが決してあきらめる必要はありません。ただし、銀行や財務専門家の的確なアドバイスがなければ極めて困難な道筋であることは間違いありません。一刻も早くランクアップするために銀行や財務専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。