マネーフォワードクラウド確定申告は青色申告特別控除75万円の対象?法令の建付けと要件をわかりやすく解説

法令の建付け

令和8年度の税制改正において、青色申告特別控除75万円の制度が創設された。この改正は、令和9年1月1日から施行される。

この改正では、青色申告特別控除65万円に該当する個人が、一定要件を充たせば75万円の控除ができる、という建付けになっている。

今回の記事では、マネーフォワードの個人ユーザーが75万円控除の対象となるかどうか、なるとしたら、どういう要件を充たせばよいか解説したい。

青色申告特別控除65万円の要件

まず、今回の税制改正では、青色申告特別控除65万円の要件が追加されているので、あらためて従来の要件を一通りの要件をおさらいし、さらに追加された要件を説明する。

① 青色申告の承認を受けていること

まず、青色申告特別控除は青色申告の特典の一つなので、事前に青色申告の承認を受けていることが要件となる。

個人事業者として基本的なことなので、皆さんはすでに対応済みだと思う。

② 仕訳帳、総勘定元帳、その他必要な帳簿を備え付けること

次に、仕訳帳、総勘定元帳、その他、必要に応じて経費帳などの補助簿を備え付けることが要件となる。

なお、仕訳帳、総勘定元帳には法定記載事項が定められているが、マネーフォワードを利用すれば記載事項の要件を充たすのは簡単なので問題ないと思う。

③ 正規の簿記の原則に従って記録すること

次に、資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を、正規の簿記の原則に従って記録することが要件となっている。

正規の簿記の原則とは、複式簿記による期間損益計算を意味するので、現金主義による記帳は認められない。

マネーフォワードを利用すれば、複式簿記による記帳は簡単にできるので、あとは、売掛金や買掛金を計上し、棚卸を計上し、減価償却費を計上するなど、期間損益計算をすれば要件を充たす。

④ 貸借対照表及び損益計算書を作成すること

次に、貸借対照表及び損益計算書を作成することが要件となっている。

実務的には、貸借対照表があれば65万円控除の対象とみなされる。マネーフォワードを利用すれば、貸借対照表の作成は簡単なのでこの要件も問題ないと思う。

ただし、全くの現金主義で記帳している場合はさすがに認められないと思うので、そこは程度問題となる。特に、売上高は実現主義に基づく出荷基準等で計上しなければならないので、売掛金は必ず計上してほしい。

⑤ 棚卸表を作成すること

次に、棚卸表の作成が要件となっている。

棚卸表は、棚卸資産の種類、品質、型等の異なるごとに、数量、単価及び金額を記載して作成する。

期末現在の棚卸高は売上原価の算定に必要である。複式簿記による期間損益計算の一環として棚卸表が必要と理解してほしい。

⑥ 帳簿及び書類を7年間保存すること

次に、帳簿及び書類を、申告期限の翌日を起算日として7年間保存することが要件となっている。

対象となるのは、仕訳帳及び総勘定元帳、その他の補助簿、棚卸表、貸借対照表及び損益計算書、その他決算時に作成した書類、取引に関して相手方から受け取った注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などの書類とされている。

なお、保存期間と保存方法に関しては別の取り扱いができる細かい規定があるが、細かく区分するほうが面倒だと思う。一律、7年間保存すればよいと理解したほうが楽である。

⑦ 電子申告すること

最後に、今回の税制改正で追加された要件として、電子申告することが要件となっている。

令和8年分までの確定申告は電子申告しなくても55万円の控除が受けられるが、令和9年分以降はそれが廃止され、10万円の控除となってしまう。

65万円の控除が受けたいなら、電子申告は義務と理解してほしい。

青色申告特別控除75万円の要件

次に、75万円控除の要件を説明する。

なお、75万円控除に該当する要件にはいくつか種類があるが、ここでは、マネーフォワードクラウド確定申告のユーザーが、75万円控除に該当する要件に絞って説明したい。

① 65万円控除に該当する個人であること

まず、最初に説明した通り、法令の建付けとして、65万円控除に該当する個人であることが要件となっている。

この要件は、マネーフォワードのユーザーというだけでは充足できないので、ユーザー自身が65万円控除に該当するように運用・手続きする必要があるが、先ほど説明した通り、それほど高いハードルではない。

② 仕訳帳及び総勘定元帳に関して電磁的記録の備付け及び保存を行っていること

次に、仕訳帳及び総勘定元帳に関して、電磁的記録の備付け及び保存を行っていることが要件となっている。

仕訳帳及び総勘定元帳に限定されているので、マネーフォワードのユーザーなら電磁的記録の備付け及び保存をすることが可能である。

ただし、最初の記録段階から一貫して行うことが要求されているため、事業年度の途中から行うことはできない。必ず、事業年度の最初から行う必要がある。

なお、開業初年度の場合は事業を開始した日から備付け及び保存をすれば必要十分である。

また、ユーザー自身のオーナーアカウントを運用すれば備付け及び保存の要件は充たすので、他者に記帳代行を依頼する場合でも要件を充たす。

③ 電磁的記録の備付け及び保存に関する細かい要件

次に、電磁的記録の備付け及び保存にはさらに細かい要件が3つある。

最初の要件は、書類の備付け要件を充たしていることである。

この要件は、自分で記帳する場合と記帳代行を依頼する場合で異なる。

□自分で記帳する場合

自分で記帳する場合は、次の書類を備え付ける必要がある。

・国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの操作説明書
・国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類
・国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類

まず、国税関係帳簿に係る電子計算機処理システムの操作説明書は、マネーフォワードの画面上にある「このページのガイド」や「使い方・FAQ」がそれに該当するので何もする必要はない。

また、国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続を明らかにした書類は、国税庁からテンプレートが提供されているので、それを参考にして作成すればよい。

そして、国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類は、マネーフォワード社のサーバに備付け及び保存する旨などを記載して作成する。

これらの書類に関して、私が実際に備え付けている書類をもとにしたサンプルを掲載する。テキストをコピペして加工すればスムーズに書類が作れると思いますので利用してみてほしい。

国税関係帳簿に係る電子計算機処理に関する事務手続(サンプル)

① 入力担当者、管理責任者の氏名
    入力担当者:○○ ○○
    管理責任者:□□ □□

② 入力のスケジュール
(1)現金出納帳(エクセルファイル)
  一週間分の領収書を、毎週一回、曜日を定めて入力する。
(2)預金、クレジットカード
  月に二回(月中と翌月初)、データを取得して入力する。
(3)売掛金、買掛金、その他勘定科目
  対象月の翌月初に月締め処理として入力する。

③ 管理責任者の確認
管理責任者は、入力担当者から月締め処理が完了した報告を受けた後、速やかに入力状況を確認する。仕訳データに誤り等を発見した場合には、入力担当者に訂正を指示し、訂正完了後に改めて入力状況を確認する。

国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続(サンプル)

① 備付け及び保存する場所
当社の国税関係帳簿に係る電磁的記録は、次のクラウドサービスのサーバに備付け、保存する。
   ・クラウドサービスの運営会社:株式会社マネーフォワード
   ・クラウドサービスの名称:マネーフォワードクラウド確定申告
   ・JIIMA認証番号:104400-00

② アカウント情報の保管管理、ログイン
入力担当者及び管理責任者は、上記クラウドサービスのアカウント情報(ID、PW)を所定の方法により適切に保管管理する。また、ログイン時には二段階認証を行わなければならず、二段階認証は、会社が貸与したスマートフォンを用いることとする。

③ バックアップデータの保存
入力担当者は、決算申告終了後、当該事業年度の仕訳帳及び総勘定元帳のPDF及びCSVをバックアップとしてグーグルドライブ内の所定のフォルダ内に保存する。管理責任者は、バックアップデータが保存されていることを確認する。

□記帳代行を依頼する場合

次に、記帳代行を依頼する場合は次の書類を備え付ける必要がある。

・委託に係る契約書
・国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類

口約束で記帳代行を依頼している場合は対象外なので、改めて契約書を締結してほしい。

国税関係帳簿に係る電磁的記録の備付け及び保存に関する事務手続を明らかにした書類は、先ほどと同様に、マネーフォワード社のサーバに備付け及び保存する旨などを記載して作成する。

b.ソフトウェア及びハードウェアの備付け要件を充たしていること

次に、電磁的記録の備付け及び保存に関する細かい要件の2番目は、ソフトウェア及びハードウェアの備付け要件である。

この要件では、パソコン、モニタ、プリンタを備付け、マネーフォワードにログインできるようにインターネット環境を整え、電磁的記録をモニタ上に表示できる、あるいは、プリントできることが要求されている。

マネーフォワードを利用しているユーザーなら当たり前に充足していると思う。

c.ソフトウェアの機能要件を充たしていること

次に、電磁的記録の備付け及び保存に関する細かい要件の3番目は、ソフトウェアの機能要件である。

①② 訂正又は削除の履歴の確認、入力日時の確認

ソフトウェアの機能要件には6つの細かい要件がある。

まず、訂正又は削除の履歴が確認できること、入力日時が確認できること、の要件は、マネーフォワードの仕訳履歴保存機能を利用すれば要件を充たす。

③ 仕訳帳と総勘定元帳に関して相互にその関連性が確認できること

次に、仕訳帳と総勘定元帳に関して、相互にその関連性が確認できること、の要件は、それぞれの仕訳に付与されている「取引No」で相互の関連性が確認できるので、要件を充たす。

④⑤⑥ 検索機能要件

次に、日付、金額、取引先を検索条件としてそれぞれ検索できること、日付及び金額に関して範囲指定して検索できること、日付、金額、取引先の2つ以上を組み合わせて検索できること、の要件は、仕訳帳の検索機能を使えば簡単なので、要件を充たす。

なお、マネーフォワードクラウド確定申告は、電子帳簿の作成及び保存に関して、「優良な電子帳簿」の機能要件を充たしたソフトウェアとして、公益社団法人、日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)の認証を受けている(認証番号104400-00)。

④ 適用届出書を提出すること

75万円控除の要件に戻って、次に、適用届出書を提出すること、の要件に関しては、法令の建付けとして、75万円控除を受けるために優良な電子帳簿を備付け保存する旨の書類を届け出る義務があることは明らかだが、この動画作成時点ではまだ様式が公表されていない。また、届出期限も明確には分かっていない。

令和9年分の確定申告に間に合うように、国税庁からアナウンスがあると思うので、あり次第、ブログに追記する予定である。

税務当局が電磁的記録の訂正又は削除の履歴を要求する意図

さて、ここまで75万円控除の要件を見てきたが、マネーフォワードクラウド確定申告のユーザーなら要件を充たすのは難しくないので、前向きに検討したいと思ったはずである。

その際、税務当局の意図を正しく理解してから検討したほうがいいと思う。

税務当局が電磁的記録の訂正又は削除の履歴を要求する意図、それは、不正の糸口を発見するためである。租税回避や脱税の意図をもって、都合の悪い記録を削除したり、つじつまを合わせるために過去にさかのぼって記録を訂正していないか調査するのが目的である。そのため、税務調査の際は真っ先にこの履歴を確認すると思う。

一方、不正をしてなければ何らデメリットはない。例えば、入力のミスや請求金額の変更などは経理的に日常茶飯事なので、それを理由とした削除、訂正であればなんの問題もない。

ただし、あらぬ疑いは避ける工夫は必要かもしれない。仕訳を訂正した時は、その理由をメモ欄に入力したほうがいいと思う。また、仕訳を削除したい時は、削除するのではなく、逆仕訳をして相殺し、その理由をメモ欄に入力したほうがいいと思う。そうすれば、税務調査の際、論点になることはないと思う。

この制度は基本的に、不正をしたらすぐばれる、不正をしなければ恩恵を受ける制度だと理解してほしい。

仕訳履歴保存機能を利用する設定

この記事の最後に、仕訳履歴保存機能を利用する設定方法を説明する。この設定は、各種設定の事業者で行うことも可能だが、通常は、次年度繰越で行うのが自然だと思う。ここでは、2026年度から2027年度に次年度更新する際に、仕訳履歴保存機能を利用する設定を行う方法を説明する。

なお、次年度更新は、データを繰り越さずに次年度を作成する方法と、データを繰り越して作成する方法があるが、ここでは、データを繰り越して作成する方法で次年度更新する。操作方法は次の通り。

・決算・申告>次年度繰越
・1. 次年度へ繰り越すデータを選択>☑2026年度の期末残高
・2. 仕訳入力を制限する/しない>☐2026年度以前の仕訳入力を制限する
・3.帳簿保存の設定>☑仕訳履歴保存機能を利用する
・データを繰り越して次年度を作成>クリック

次年度更新をするタイミングとして、12月分の仕訳登録が概ね済んだ段階で、翌年度の会計年度が存在しない状態で、データ領域を作成する。その際、期末残高は繰り越すのでチェックを入れたまま、仕訳入力は制限しないのでチェックを外し、帳簿保存は仕訳履歴保存機能を利用するにチェックを入れる。

なお、翌年度の会計年度が存在する状態で、翌年度の仕訳が一件でも登録されていると、仕訳履歴保存機能を利用するにチェックを入れることができなくなる。その場合は、その仕訳を削除してから前年度に戻り、改めて次年度更新の手続きをすればOKである。

この記事を利用する場合の注意点

この記事に含まれる税務的な解釈等はすべて個人的な見解である。この記事を利用する場合は、専門家に相談する等、閲覧者の責任で利用することが前提となっている。