食品の消費税率が下がると、飲食店の納税額が増える!?という噂を検証してみる

食品の消費税減税

2027年4月、食品の消費税率が1%に減税される見込みとなった。そんな中、減税されると一般課税を選択している飲食店の納税額が増える、という噂が出回っている。そこで、今回の記事では、一般課税を選択している飲食店の損益とキャッシュフローを計算し、噂の真偽を検証したいと思う。

なお、一般課税を選択している飲食店であれば、法人でも個人事業主でも結果は同じなので、今回は法人を前提に話を進める。

まずは、減税前の損益モデルを下の画面左のように設定する。金額は税抜金額、カッコ内は消費税率を意味している。

法人税額は、実効税率30%として計算している。計算式は次の通り。
・法人税額=150万円×30%=45万円

また、この損益モデルのキャッシュフローは上の画面右の通り。

消費税額の計算式は次の通り。
・仮受消費税=1,000万円×10%=100万円
・仮払消費税=300万円×8%+(100万円+150万円)×10%=49万円
・消費税の納税額=仮受消費税100万円-仮払消費税49万円=51万円

次に、この損益モデルをベースとして、食品の消費税率を1%に減税した場合の損益を計算し、減税前と比較してみる。

食品の小売価格が下がると、仕入が下がって利益が増えると考えがちだが、それは早合点だ。

下がるのは消費税の仮払いであって、税引後の仕入高は減税前と同じだからだ。基本的に、消費税は損益に影響しないので、減税後の損益は減税前と一致する。

つまり、一般課税を選択している飲食店にとって、食品の消費税が下がっても、利益にならないし、損にもならない。

次に、減税後のキャッシュフローを計算し、減税前と比較してみる。

なお、消費税額の計算式は次の通り。
・仮受消費税=1,000万円×10%=100万円
・仮払消費税=300万円×1%+(100万円+150万円)×10%=28万円
・消費税額=仮受消費税100万円-仮払消費税28万円=72万円

減税前に51万円だった消費税額が減税後は72万円となり、21万円増加する。つまり、食品の消費税が減税されると、一般課税を選択している飲食店の納税額が増える、という噂は真実である。

それでは、飲食店は消費税が増税になるのか、というと、そうではない。

減税後のキャッシュフローを見ると、減税前に324万円だった仕入高が303万円となり、消費税額の仮払いが21万円減少している。そして、この減少分は納税額の増加分21万円と一致する。

つまり、仕入先へ仮払いする消費税額と納税額はトレードオフの関係になっている、ということである。その結果、税引後のキャッシュフローは減税前と一致する。

以上のことから、一般課税を選択している飲食店にとって、食品の消費税が下がっても、キャッシュフローは増えないし、減りもしない。つまり、増税ではない。

一般課税を選択している飲食店にとって、食品の消費税が下がると、消費税の納税額が増える、そういう現象は確実に起きる。

そして、そうなると、多くの飲食店が納税に窮するだろうと私は予想している。

その理由は、飲食店にとって、食品の消費税が安くなると、その分、期中の資金繰りが楽になる。浮いたお金は決算時の納税資金として貯蓄しておかねばならないが、そうとは知らずに使ってしまうと危惧されるからである。

もしあなたが飲食店を経営していて、一般課税を選択しているなら、減税後は、毎月、納税資金を貯蓄したほうがいいと思う。どの程度貯蓄すればよいかは、過去の仮払消費税を集計すれば簡単に計算できる。顧問税理士に相談してみて欲しい。

さて、今回の記事では、食品の消費税が減税された場合、一般課税を選択している飲食店へどのような影響があるか議論した。ただし、今回の議論では、食品の消費税が下がったら小売価格も下がるケースを暗黙の前提としている。

しかし、食品の消費税が下がったからと言って小売価格が下がるとは限らない。

そこで、次回の記事では、食品の消費税が下がっても小売価格が下がらないケースを前提に、一般課税を選択している飲食店への影響を議論したいと思う。

この記事を利用する場合の注意点

この記事に含まれる税務的な解釈等はすべて個人的な見解である。この記事を利用する場合は、専門家に相談する等、閲覧者の責任で利用することが前提となっている。