食品の消費税率が下がると飲食店が大損する!?という仮説を検証してみる

飲食店が大損する仮説

2027年4月、食品の消費税率が1%に減税される見込みとなった。減税されると、一般課税を選択している飲食店が大損する、という仮説が存在する。そこで今回の記事では、この仮説を検証してみたいと思う。

今回、食品の消費税率が1%に減税されても、食品の小売価格は下がらない、私はそう予想している。その理由は3つある。

最初の理由は、消費税法の建付けの問題である。消費税法では、事業者に対して、消費税の価格転嫁を義務付けていない。事業者は、経済合理性に基づいて自由に価格設定する前提のもと、消費税を価格転嫁してもよいし、しなくてもよい、というスタンスになっている。

つまり、今回、消費税率を引き下げたところで、事業者に価格を引き下げる法的義務はない。そして、事業者が経済合理性に基づいて自由に価格設定した結果、価格を維持するのは当然の選択になる。

2つ目の理由は、価格の下方硬直性である。通常、経済学においては、需要減少や供給過剰が起きても価格がスムーズに下落しない現象を、価格の下方硬直性という。今回の消費税減税は、食品の需給に直接影響しない。需給の変動があってもなかなか下がらない価格が、変動もないのに下がるとは、市場経済では、到底考えられない。

3つ目の理由は、世界情勢と円安の問題である。現在、2つの地域で大きな戦争が発生していることもあり、資源価格や穀物価格が上昇している。また、円安によって輸入価格も上昇している。そのため、食品小売り事業者においても、コスト上昇圧力にさらされている状況に変わりはない。その結果、消費税減税分とコスト上昇に伴う価格転嫁分が相殺されて、小売価格が維持されても不思議はない。この状況は、道義的な非難をかわす格好な理由ともなるだろう。

さて、もし、食品の小売価格が下がらなかった場合、一般課税を選択している飲食店にどういう影響があるか、損益とキャッシュフローで検証したいと思う。

まずは、減税前の損益モデルを画面左のように設定する。金額は税抜金額、カッコ内は消費税率を意味している。

なお、法人税額は、実効税率30%として計算している。計算式は次の通り。
・法人税額=150万円×30%=45万円

次に、この損益モデルのキャッシュフローは画面右の通り。なお、消費税額の計算式は画面下を参照されたい。

次に、この損益モデルをベースとして、食品の消費税率を1%に減税した場合の損益とキャッシュフローを計算する。ただし、減税後も、食品の小売価格は維持されるものとする。

 

まず、減税後の損益を減税前と比較すると画面の通り。

税込仕入高が維持された場合、税抜仕入高は21万円増加するため、税引前利益は同額減少して129万円となる。それに伴い、法人税は6万円減少するが、税引後利益は、差し引き15万円減少して90万円となる。

つまり、食品の小売価格が下がらない場合、減税になると、飲食店は損をする。

次に、減税後のキャッシュフローを減税前と比較すると画面の通り。なお、消費税額の計算式は画面下を参照されたい。

税込仕入高が維持された場合、税引前キャッシュフローは減税前と同額になる。一方、仮払消費税は21万円減少するので、消費税の納税額が同額増加する。法人税は6万円減少するが、税引後キャッシュフローは、差し引き15万円減少して90万円となる。

つまり、食品の小売価格が下がらない場合、減税になると、飲食店は手持ち資金が減る。

さて、今回の記事では、食品の消費税が下がっても小売価格が下がらない場合、一般課税を選択している飲食店へどのような影響があるか議論した。

結論として、一般課税を選択している飲食店は大損することが予想される。

今回の消費税減税は、物価高で苦しむ消費者を支援する、という目的で始められるようだが、食品の小売価格が下がらない場合、消費者支援にならない。また、その政策効果として、食品小売り事業者に補助金を支給する効果と、一般課税を選択している飲食店に損失を与える効果が見込まれるが、これは、税制中立の原則に反する。

私的には、今回の政策は速やかに撤回し、直接給付に切り替えるほうが良いと考えている。直接給付なら、物価高で苦しむ消費者を支援する効果が見込まれるし、政府部門以外の経済主体全員にメリットが見込まれるからだ。もちろん、一般課税を選択している飲食店にとってもメリットがある。