輸出したら消費税が還付されて儲かる!?という噂を検証してみる

輸出したら消費税が還付されるのは本当か?

国際的に、間接税は消費地課税主義が原則となっているため、課税資産の輸出売上は消費税が免税となっている(消費税法7条1項)。一方、課税資産の輸出売上に係る国内仕入は仕入税額控除の対象となる。そのため、輸出免税の仕組みは一般的に0%課税と呼ばれている。

ここで、輸出免税の仕組みを具体的な事例で説明する。

・税抜10,000円(税込11,000円)で仕入れた商品を11,000円で輸出販売した
・1年間の取引はこの取引だけだとする
・仮受消費税=11,000円×0%=0円
・仮払消費税=10,000円×10%=1,000円
・消費税の納税額=仮受消費税-仮払消費税=0円-1,000円=△1,000円

消費税の納税額がマイナスなので、結局、1,000円還付されることになる。
つまり、輸出したら消費税が還付される、そういう仕組みがあるのは事実である。

噂の中身

輸出免税に消費税還付の仕組みがあることをご理解いただいたところで噂の中身を紹介する。

・税抜10,000円(税込11,000円)で仕入れた商品を海外に輸出し9,500円で販売
・損益は9,500円-10,000円=△500円の赤字
・しかし、消費税が1,000円還付されるから差し引き500円の儲けとなる

さて、この話は本当だろうか?あなたも少し考えていただきたい。

噂の検証

それでは、噂の真相を損益とキャッシュフローで検証してみたい。

・損益
 ・売上高9,500円-売上原価10,000円=損失△500円
・キャッシュフロー
 ・売上高9,500円-仕入原価11,000円+消費税還付金1,000円=損失△500円

ご覧の通り、損益、キャッシュフローともに500円の損失となる。つまり、この噂は間違いということだ。言い換えれば、損益の赤字を消費税還付金で補うことはできないということである。消費税還付金は仕入で仮払いした消費税1,000円が戻ってくるだけのことで損益に影響することはないからだ。

結果的に、10,000円で仕入れた商品を9,500円で売ると500円損するという当たり前の話に帰結することになる。

消費税の仕組み

消費税は損益に影響しない仕組みとなっている。まとめると次のようになる。

・消費税を顧客から預かっても得はない
・消費税を他の課税事業者に仮払いしても損はない
・消費税を税務署に納税しても損はない
・消費税が税務署から還付されても得はない

具体的な事例で説明してみたい。

<事例1>
・前期仕入れた商品税抜10,000円を税抜11,000円で販売した
・仮受消費税=11,000円×10%=1,100円
・仮払消費税=0円(前期に仕入税額控除済み)
・消費税納税額=1,100円-0円=1,100円

顧客から預かった消費税1,100円はそっくりそのまま納税するので、消費税を顧客から預かっても得はないし、消費税を税務署に納税しても損はない。

<事例2>
・商品(1個税抜10,000円)を2個仕入れ、そのうち1個を税抜11,000円で販売した
・仮受消費税=11,000円×10%=1,100円
・仮払消費税=10,000円×2個×10%=2,000円
・消費税還付金=1,100円-2,000円=△900円

顧客から預かった消費税より他の課税事業者に仮払いした消費税が大きい場合はその分還付されるので、消費税を他の課税事業者に仮払いしても損はないし、消費税が税務署から還付されても得はない。

結局、顧客から預かった消費税を上限として税務署に納税するのが基本で、顧客から預かった消費税より他の課税事業者に仮払した消費税が大きい場合はその分税務署から還付される。いずれにしても損得はない。

結び

消費税が還付されると儲かったと感じるかもしれないが、実際は仮払いしたお金が返ってくるだけなので全然得にならないことはご理解いただけたと思う。消費税は損益に無関係なので消費税還付金で儲けることはできないということだ。輸出免税を利用した儲け話があっても飛びつかない方が賢明である。

余談として、「消費税は輸出企業に対する補助金である」とトランプ政権の高官が発言したそうだが、消費税は損益に無関係なので輸出企業にそういうインセンティブは働かない。狂人理論に基づく発言のようだが、質の悪い連中である。