税区分の初期設定【マネーフォワードクラウド会計・クラウド確定申告】
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税区分の設定は難易度が高い
消費税の課税事業者は、入力画面で税区分を選択する必要がある。ほとんどの場合、勘定科目に設定された税区分で事足りるので支障は感じないかもしれないが、場合によっては、税区分を変更する必要が生じる。
例えば、取引先を訪問する際、お菓子の手土産を買った場合である。ご案内の通り、食品の消費税率は軽減8%なので、接待交際費に設定された税区分が10%の場合、軽減8%に変更しなければならない。また、食品とそれ以外の商材の両方を取り扱っている場合、売上高の税区分を10%と軽減8%に区分しなければならない。
各種入力画面において税区分はプルダウンで選択する仕様になっている。その際、デフォルトの選択肢が151種類あるため、そのままだと選択に手間取る。そのため、マネーフォワードでは必要な税区分のみ表示させる設定が可能となっている。
ただし、事業者、事業内容、取引内容によって必要な税区分が異なるため、難易度が高い。
例えば、消費税の課税方式には一般課税と簡易課税があるが、それぞれ必要な税区分は全く異なる。また、簡易課税においても事業区分ごとにそれぞれ税区分が異なる。さらに、有価証券売却、輸出入など特定の取引に必要な税区分もある。また、売上高5億円超の事業者で個別対応方式を選択している事業者は、より細かい税区分が要求される。
そこで、この記事ではまず、簡易課税の事業区分ごとに最低限必要な税区分を提示する。そして、追加的な選択肢として、特定の取引に必要な税区分を提示する。最後に、一般課税の税区分を提示する。
税区分の設定操作
まずは、税区分の設定操作を案内する。
・各種設定>税区分
使用する税区分にチェックを入れて、使用しない税区分のチェックを外せば設定完了である。
チェックが外せない税区分について
本題に入る前に、チェックが外せない税区分の取り扱いについて説明する。
勘定科目で設定した税区分、仕訳登録で利用した税区分、自動仕訳ルールに設定された税区分はチェックを外すことができない仕様となっている。
このうち、勘定科目と自動仕訳ルールは税区分を変更してチェックを外すことは可能だが、過年度の仕訳登録で利用した税区分は変更することができない。結局できないのなら、税区分が少し増えたところでそれほど支障はないので、チェックが外せない税区分はそのまま放置するのが実務的な対応だと思う。
簡易課税の税区分について
まずは、簡易課税の税区分に関して説明する。
簡易課税は、課税売上高に一定割合を掛けて税額計算する仕組みとなっている。そのため、簡易課税の税区分は事業区分ごとに定められている。そして事業区分は、業種ごとに第一種から第六種に区分されている。よって、第一種事業から第六種事業それぞれの事業区分に最低限必要な税区分を示す。
なお、簡易課税において仕入や経費の税区分は全く重要でない。税額計算に使わないからである。仕入や経費の税区分は勘定科目に設定された税区分のまま放置しても全く問題ない。
簡易課税>卸売業(第一種事業)
卸売業とは、他の者から購入した商品をその性質や形状を変えないで他の事業者に対して販売する事業をいう。
例えば、お酒の卸売業者がお酒の小売店に対して行うお酒の販売など、他の者から仕入れた商品をほかの小売業者または卸売業者に販売する事業が該当する。また、ガソリンスタンドが運送会社に対して行うトラック用燃料の販売など、購入者が業務用に使用する商品を販売する事業が該当する。また、産業用機械の販売など、本来の用途が業務用である物品を他の事業者に販売する事業が該当する。
卸売業は、事業区分が第一種事業に該当し、最低限必要な税区分は以下の通り。
・対象外
・課税売上 10% 一種(食品以外の販売がある場合)
・課税売上 (軽)8% 一種(食品の販売がある場合)
・輸出売上 0%(輸出がある場合)
・非課税売上
・対象外売上
・課税仕入 10%
・非課税仕入
・対象外仕入
簡易課税>小売業(第二種事業)
小売業とは、他の者から購入した商品をその性質や形状を変えずに販売する事業で、卸売業以外の事業をいう。基本的には消費者向け小売事業のことである。
小売業は、事業区分が第二種事業に該当し、最低限必要な税区分は以下の通り。
・対象外
・課税売上 10% 二種(食品以外の販売がある場合)
・課税売上 (軽)8% 二種(食品の販売がある場合)
・輸出売上 0%(輸出がある場合)
・非課税売上
・対象外売上
・課税仕入 10%
・非課税仕入
・対象外仕入
簡易課税>建設業、製造業(第三種事業)
日本標準産業分類の大分類において「建設業」「製造業」に分類される事業は、事業区分が第三種事業に該当する。
最低限必要な税区分は以下の通り。
・対象外
・課税売上 10% 三種
・非課税売上
・対象外売上
・課税仕入 10%
・非課税仕入
・対象外仕入
簡易課税>労務提供のみの一人親方(第四種事業)
建設業であっても、加工賃等を対価とする役務の提供は事業区分が第四種事業に該当する。材料費や外注費を負担しない、労務提供のみの一人親方がこれに該当する。
最低限必要な税区分は以下の通り。
・対象外
・課税売上 10% 四種
・非課税売上
・対象外売上
・課税仕入 10%
・非課税仕入
・対象外仕入
簡易課税>飲食店業(第四種事業)
飲食店業は事業区分が第四種事業に該当する。ただし、テイクアウトでお弁当を販売する場合は製造小売業に該当するので、その売上は第三種事業の税区分となる。
最低限必要な税区分は以下の通り。
・対象外
・課税売上 (軽)8% 三種(食品テイクアウトの売上)
・課税売上 10% 四種(店内飲食の売上)
・非課税売上
・対象外売上
・課税仕入 10%
・非課税仕入
・対象外仕入
簡易課税>サービス業(第五種事業)
日本標準産業分類の大分類において「専門・技術サービス業」「生活関連サービス業」「複合サービス業」「ほかに分類されないサービス業」に分類される事業は事業区分が第五種事業に該当する。
最低限必要な税区分は以下の通り。
・対象外
・課税売上 10% 五種
・非課税売上
・対象外売上
・課税仕入 10%
・非課税仕入
・対象外仕入
簡易課税>不動産業(第六種事業)
「不動産仲介業」「不動産管理業」「駐車場業」「その他の不動産賃貸業」など、日本標準産業分類の大分類の「不動産業」に該当する事業は、事業区分が第六種事業に該当する。
最低限必要な税区分は以下の通り。
・対象外
・課税売上 10% 六種
・非課税売上
・対象外売上
・課税仕入 10%
・非課税仕入
・対象外仕入
簡易課税>事業用固定資産の売却収入がある場合(第四種事業)
簡易課税において、事業用固定資産の売却収入がある場合は第四種事業の税区分で処理する必要がある。例えば、事業用の車両を下取りに出した場合などが該当する。
追加する税区分は以下の通り。
・課税売上 10% 四種(事業用固定資産の売却収入がある場合)
一般課税の税区分について
続いて、一般課税の税区分について説明する。
一般課税の税区分は若干の基礎知識が必要である。一般課税では、仮受消費税から仮払消費税を仕入税額控除して納税額を計算するが、非課税売上に要する仮払消費税は原則として仕入税額控除できない建付けとなっている。例えば、有価証券売却収入は非課税なので、その売却手数料に係る仮払消費税は仕入税額控除できない。
ただし、課税売上高5億円以下、かつ、課税売上割合95%以上の場合は、非課税売上高に要する仮払消費税も合わせて全額を仕入税額控除できることになっている。
なお、課税売上割合は次の計算式で算定する。
・課税売上割合=(課税売上高+免税売上高)÷(課税売上高+免税売上高+非課税売上高)
一方、課税売上高5億円超、または、課税売上割合95%未満の場合は、原則通り、非課税売上に要する仮払消費税は仕入税額控除できないが、仕入控除税額の計算方法には、個別対応方式、一括比例配分方式のいずれかを選択できる。
まず、個別対応方式では仮払消費税を次の3つに区分する。
イ 課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの
ロ 非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの
ハ 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの
そして、次の算式で仕入控除税額を計算する。
・仕入控除税額 = イ + (ハ × 課税売上割合)
一方、一括比例配分方式は次の算式で仕入税額控除額を計算する。
・仕入控除税額 = 仮払消費税 × 課税売上割合
つまり、仕入税額控除の方法は、全額控除、個別対応方式、一括比例配分方式の3種類ある。しかし、税区分の設定としては、全額控除と一括比例配分方式は同じ設定で対応できるので、個別対応方式の設定と合わせて2種類の設定となる。
一般課税>全額控除・一括比例配分方式
①全額控除及び一括比例配分方式に関する最低限必要な税区分は以下の通り。
・対象外
・課税売上 10%(食品以外の課税売上高がある場合)
・課税売上 (軽)8%(食品の課税売上高がある場合)
・非課税売上
・対象外売上
・課税仕入 10%
・課税仕入 (軽)8%
・非課税仕入
・対象外仕入
②輸入取引がある場合は以下の税区分を追加する。
・輸入仕入-本体 10%(食品以外の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-消費税額 7.8%(食品以外の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-地方消費税額 2.2%(食品以外の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-本体 (軽)8%(食品の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-消費税額 (軽)6.24%(食品の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-地方消費税額 (軽)1.76%(食品の輸入仕入高がある場合)
③輸出取引がある場合は以下の税区分を追加する。
・輸出売上 0%(輸出売上がある場合)
④有価証券の売却収入がある場合は以下の税区分を追加する。
・非課税売上-有価証券譲渡
一般課税>個別対応方式
個別対応方式は、課税仕入高を以下の3つに区分しなければならないので、税区分の選択肢が増える。
・課税売上高のみに要する課税仕入高
・非課税売上のみに要する課税仕入高
・課税売上高と非課税売上に共通する課税仕入高
①最低限必要な税区分は以下の通り。
・対象外
・課税売上 10%(食品以外の課税売上高がある場合)
・課税売上 (軽)8%(食品の課税売上高がある場合)
・非課税売上
・対象外売上
・課税仕入 10%
・共通課税仕入 10%
・非課税対応仕入 10%
・課税仕入 (軽)8%
・共通課税仕入 (軽)8%
・非課税対応仕入 (軽)8%
・非課税仕入
・対象外仕入
②輸入取引がある場合は以下の税区分を追加する。
輸入取引で非課税売上高に要する取引は想定しづらい。よって、課税売上高のみに要する課税仕入高に対応する税区分を設定しておけば対応可能だと思う。
・輸入仕入-本体 10%(食品以外の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-消費税額 7.8%(食品以外の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-地方消費税額 2.2%(食品以外の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-本体 (軽)8%(食品の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-消費税額 (軽)6.24%(食品の輸入仕入高がある場合)
・輸入仕入-地方消費税額 (軽)1.76%(食品の輸入仕入高がある場合)
③輸出取引がある場合は以下の税区分を追加する。
・輸出売上 0%(輸出売上がある場合)
④有価証券の売却収入がある場合は以下の税区分を追加する。
・非課税売上-有価証券譲渡
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