カテゴリー別アーカイブ: 金融検査マニュアルの基礎知識

平成26年金融モニタリング基本方針

平成26事務年度・金融モニタリング基本方針が公表されました。その重点施策として、「事業性評価に基づく融資等」が掲げられています。金融機関には、「財務データや担保・保証に必要以上に依存することなく、借り手企業の事業の内容や成長可能性などを適切に評価し、融資や助言を行い、企業や産業の成長を支援していく」ことが求められることになります。

これに対し、銀行が対応に苦慮している状況が新聞報道されています(平成26年9月29日付・日経「事業性融資って何?戸惑う銀行」)。

銀行が戸惑うのは無理もありません。企業金融では、預金者保護の観点から融資時点での貸倒れは想定されていないからです。つまり、融資を1円残らず回収するのが銀行の義務です。

一方、金融庁が求めている融資形態は「事業金融」に近いものです(きっと同じ意味だろうと思います)。事業金融とは、貸倒リスクを想定し、それ以上のリターンが見込まれる場合に行われる融資形態のことです。事業金融では事業の成長性が融資判断の基準となります。

企業金融に貸倒リスクが想定できない中、「事業性評価に基づく融資」は不可能であるように思われます。「事業性評価に基づく融資」を推進したいのであれば、貸倒リスクの想定を認めなければならないでしょう。しかし、それは預金がリスクにさらされることを意味します。

金融モニタリング基本方針と監督方針

平成25年9月、金融庁は今事務年度(平成25年7月~平成26年6月)の「金融モニタリング基本方針(検査基本方針)」と「監督方針」を公表しました。二つの方針は、金融庁が銀行等を検査・監督する上での基本方針です。

 

(平成24年事務年度の監督重点分野)
 ・ 円滑な金融仲介機能の発揮
(平成25年事務年度の監督重点分野)
 ・ 中小企業の経営支援をはじめとした積極的な金融仲介機能の発揮

ここでの金融仲介機能とは新規融資を意味しますが、平成25年事務年度では、「中小企業の経営支援」と名指しした上で「積極的な」新規融資を銀行に促している点が注目です。

平成25年4月、日銀が実施した異次元緩和によって銀行の日銀当座預金残高が積みあがっている中、政府のデフレ脱却政策と成長戦略に後押しされる形で、金融庁が銀行に対して果敢にリスクを取るように促している構図が透けて見えます。

一方、平成25年 金融モニタリング基本方針には、地域金融機関に対する検証項目として次の項目が掲げられています。

 ・ 政府のデフレ脱却の取組みが進む中での審査の考え方の変更

地域金融機関が、政府のデフレ脱却方針に応えるため、今後どのように「審査の考え方」を変更するのか注目しなければなりません。

また、金融モニタリング手法の見直しとして注目すべきなのは次の2点です。

 ・ 融資審査における事業性の重視

担保・保証に過度に依存せず、事業性を重視した融資慣行を確立するために、事業の期待収益とリスクに対する評価能力を高めるように金融機関は求められています。中小企業の資金調達力が、その事業性に依存する傾向はより一層強まっていくでしょう。

 ・ 小口の資産査定に関する金融機関の判断の尊重

金融機関の財務全体の健全性の観点からあまり重大でない小口の資産査定については、引当等の管理体制が整備され有効に機能していることを前提として、金融機関による債務者区分等の判断が極力尊重されることになりました。中小企業に対する融資の多くが「小口」に該当すると見込まれるため、中小企業にとって、銀行の裁量による融資の拡大が期待されます。

金融モニタリング基本方針と監督方針は経済金融情勢等を踏まえて毎年作成されます。つまり、毎年方針が変わるということです。金融庁の方針が変われば銀行の融資姿勢も変わります。毎年変わる金融庁の方針に財務活動を適応させていく必要があります。

責任共有制度と信用保証制度の行方

金融検査マニュアルや監督指針などの法令が銀行の融資姿勢に影響を与えるのは当然ですが、保証制度も銀行の融資姿勢に大きな影響を与えます。

中小企業に関わる銀行融資の保証制度には、信用保証協会の公的保証制度と経営者による個人保証制度があります。

信用保証協会保証付融資は正常債権として非分類(Ⅰ分類)されるため、銀行は積極的に融資に取組むのが通例でした。しかし、平成19年10月に責任共有制度が導入されてからは、プロパー融資と同様の融資審査が行われるようになりました。

責任共有制度とは、それまで信用保証協会が原則100%保証していた保証付融資について、原則として銀行に2割の信用リスクを負担させる制度です。

責任共有制度が導入されるまでは、信用保証協会の保証を付けることができれば容易に資金調達できましたが、導入後は信用保証協会の保証が付いていても融資を断られるケースが出始めました。銀行は融資先企業の財務内容を厳格に審査し始めたからです。

ただし、政治的な救済策として、責任共有制度の対象外となっている保証制度(100%保証)も用意されています。しかし、責任共有制度が原則とされた重みを直視しなければなりません。それは信用保証協会の保証能力が限界を迎えつつあることを示しているからです。

公的信用保証制度の行く末を睨みながら、資金調達を円滑に行うための準備が必要だといえます。

3か月以上延滞債権

3か月以上延滞債権とは、元金または利息の支払が約定支払日の翌日を起算日として3か月以上延滞している貸出債権をいいます。3か月以上延滞債権は要管理債権であるため、3か月以上延滞債権に該当する債務者は要注意先(要管理債権)以下に債務者区分され、資金調達が極めて困難な状況となります。3か月以上延滞債権に対する救済策はありません。

借入金の返済見通しが立たない場合は、延滞する前に銀行に相談すべきです。延滞してから銀行に支援を要請しても、より厳しい対応が待っているだけです。選択の余地はありません。延滞する前に銀行に支援を要請すれば、貸出条件の変更など柔軟な対応をしてくれるはずです。また、貸出条件緩和債権に該当させない要件も整備されています。貸出条件緩和債権に該当しなければ、要注意先(正常債権)に債務者区分される可能性が高くなります。要注意先(正常債権)に債務者区分されれば、正常な運転資金を調達することも、不動産担保を拠り所として資金調達することもできます。事業を継続させる道が開けるのです。

貸出条件緩和債権

貸出条件緩和債権とは「債務者の経営再建又は支援を図ることを目的として、金利の減免、利息の支払猶予、元本の返済猶予、債権放棄その他の債務者に有利となる取決めを行った貸出金」をいいます。

また、中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針では、元本返済猶予債権のうち、貸出条件緩和債権に該当するものとして「当該債務者に関する他の貸出金利息、手数料、配当等の収益、担保・保証等による信用リスク等の増減、競争上の観点等の当該債務者に対する取引の総合的な採算を勘案して、当該貸出金に対して、基準金利(当該債務者と同等な信用リスクを有している債務者に対して通常適用される新規貸出実行金利をいう)が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていない債権」としています

具体的には次の手順で貸出条件緩和債権に該当するか判断します。

1.債務者の支援を目的としているか
2.基準金利が適用されているか
3.個別の債務者に対する取引の総合的な採算が取れているか
4.合理的で実現可能性の高い経営改善計画が策定されているか

以下、詳しく見ていきます。

債務者の支援を目的としていない場合は、そもそも貸出条件緩和債権に該当しません。たとえば次のようなケースが考えられます。

・正常な運転資金を短期貸出にて同一条件で反復継続している貸出金
・正常先の債務者に対する条件変更
・他の金融機関との競争上の観点から決定された条件変更
・当初約定時点から基準金利を下回る金利が適用されている場合

債務者の支援を目的とした条件変更であっても、基準金利が適用されていれば、貸出条件緩和債権には該当しません。

基準金利とは、貸出条件緩和債権の判定対象となる要注意先の債務者について、デフォルト確率を適切に反映した複数の区分を設け、それぞれの区分に応じた新規貸出約定金利を貸出金額で加重平均することで算出される金利をいいます。

条件変更をした時点で基準金利が適用されており、貸出条件緩和債権に該当しないとされた債権に関しては、その後、金融情勢等の変化により基準金利が上昇したことによって基準金利を下回ることになっても、自動的に貸出条件緩和債権と認定されることはありません。

債務者の支援を目的とした条件変更であり、表面上は基準金利が適用されていない場合であっても、個別債務者に対する取引の総合的な採算が取れていれば、貸出条件緩和債権に該当しません。

総合的な採算が取れているとは、①担保・保証によって信用リスク等が減少している場合や与信期間の差異によって信用リスク等が減少している場合に、減少後の信用リスク等に見合ったリターンが確保されていること、②競争上の観点から信用リスク等に比べて金利が低く設定されていること③他の貸出金利息、手数料、配当等の収益によって信用リスク等に見合ったリターンが得られていること、をいいます。

逆に、表面的には基準金利が適用されている場合であっても、総合的な採算を勘案した結果、信用リスク等に見合ったリターンが得られていないと認められる場合は、貸出条件緩和債権に該当します。

債務者の支援を目的とした条件変更であり、総合的な採算を勘案した結果、基準金利が適用される場合と実質的に同等の利回りが確保されていないと認められる場合であっても、債務者が合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画を策定している場合は、貸出条件緩和債権に該当しません。

合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画とは、①計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること、②計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと、③計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること、④計画期間が概ね5年以内(計画期間が5年超10年以内で計画通りに進捗している場合も含む)であり、計画終了後の債務者区分が正常先となること、を充足する計画をいいます。

中小・零細企業の場合は、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画を策定していない場合であっても、今後の資産売却予定、役員報酬や諸経費の削減予定、新商品等の開発計画等のほか、中小企業の技術力、販売力、成長性を総合的に勘案し、中小企業の実態に即して金融機関が作成した経営改善に関する資料がある場合には、貸出条件緩和債権に該当しません。

現行の金融検査マニュアルでは、貸出条件緩和債権に関する幾重もの救済策が用意されています。銀行としても自行の債権を貸出条件緩和債権に極力該当させたくないと考えています。この点で銀行と中小企業の利害は一致しています。銀行から矢継ぎ早に問い合わせが来ることがありますが、御社に対する債権を貸出条件緩和債権にしないために努力しているのかもしれません。銀行からの問い合わせには真摯に、スピード感を持って対応していくことが重要です。

債務者区分の判断基準

中小企業の資金調達力は債務者区分によって決まりますが、債務者区分は次に掲げる項目を総合的に勘案して判断されます。

1、債務者の実態的な財務内容
2、返済能力
3、債務者に対する貸出条件及びその履行状況
4、事業の継続性と収益性の見通し
5、キャッシュフローによる債務償還能力
6、経営改善計画等の妥当性
7、金融機関等の支援状況等

以下、その内容を具体的に見ていきます。

1、債務者の実態的な財務内容

経常利益を計上し、実質的に債務超過でなければ財務内容に問題がなく、正常先と判断されます。

代表者等からの借入金は自己資本相当額に加味することができます。表面上は債務超過であっても代表者からの借入金を自己資本相当額に加味すれば債務超過が解消される場合は「実態」としての財務内容に問題はありません。代表者等には、代表者の家族、親戚、代表者やその家族が経営する関係企業などが含まれます(以下同様)。ただし、代表者等の支援の意思が必要です。

有価証券の含み益は自己資本相当額に加味することができます。

減価償却をしていない場合、減価償却費の要計上額を当期純利益から減額して「実態」としての財務内容を判断します。その結果、表面上は黒字であっても実態は赤字と判断されることがあります。減価償却せずに黒字を確保する方法は銀行対策としてよく使われる方法ですが、意味が無いだけでなく、不要な税金を支払うため、有害無益だといえます。

減価償却不足額がある場合は、自己資本から減額して「実態」としての財務内容を判断します。その結果、表面上は資産超過であっても実態は債務超過と判断されることがあります。減価償却前で赤字の場合、減価償却をしないほうが将来的な税負担を減らせるという点で税制上は有利です。しかし、積みあがった減価償却不足額が自己資本から減額されて債務超過と判断されれば資金調達に支障がでます。資金調達を優先させるならば、毎期継続的な減価償却をすべきです。毎期継続的な減価償却をしたうえで赤字であっても、その赤字を原点として黒字回復させる財務計画を立案し、実行することが健全な経営姿勢だといえます。

不良在庫や不渡手形などの不良資産・不良債権がある場合は、自己資本から減額して「実態」としての財務内容を判断します。その結果、表面上は資産超過であっても実態は債務超過と判断されることがあります。適切な在庫管理や債権管理が重要な経営課題とされる一つの根拠といえます。

代表者等への貸付金や未収金などがある場合で回収不能額がある場合には、自己資本から減額して「実態」としての財務内容を判断します。その結果、表面上は資産超過であっても実態は債務超過と判断されることがあります。表に出せない支出を安易に代表者等への貸付金として処理する場合がありますが、代表者に返済する意識が乏しいため、大きな金額に積みあがることは珍しくありません。そして資金調達に支障が生じることになります。安易な処理は厳に慎むべきです。

2、返済能力

キャッシュフローが元本返済額を上回っている場合は返済能力に問題はありません。キャッシュフローとは税引後利益に減価償却費を加えた現金余力をいいます。

赤字や債務超過の原因が固定資産の売却損などの一過性のものであり、短期間に黒字化することが確実と見込まれる場合は、返済能力に問題がないため、正常先と判断されます。

赤字のために返済資金を代表者等から調達している場合で、代表者等への報酬や家賃の支払いがある場合は、代表者等への報酬や家賃を返済能力に加味することができます。

代表者等(個人及び関係企業)の収入状況は、返済能力に加味することができます。ただし、代表者等の支援の意思が必要です。

代表者等の正味財産(預金・有価証券・不動産等の資産から借入金・保証債務等の債務を差し引いたもの)は、返済能力に加味することができます。

3、債務者に対する貸出条件及びその履行状況

貸出条件及びその履行状況については、債務者区分を判断する上で重要な要素です。

貸出条件の変更が行われている場合で、その債権が「貸出条件緩和債権」に該当する場合は要注意先(要管理債権)以下に債務者区分されるため資金調達が困難となります。

債務者が3か月以上延滞している場合は要注意先(要管理債権)以下に債務者区分されるため資金調達が困難となります。

4、事業の継続性と収益性の見通し

「事業の継続性と収益性の見通し」とは、「売上高の見通し」を意味します。中小企業に関しては、次に掲げる項目などあらゆる判断材料を売上高の見通しに反映させることができます。

①企業の技術力、販売力等

・保有している知的財産権(特許権、実用新案権、商標権、著作権等)
・新商品、新サービスの開発状況を踏まえた事業計画書
・大手企業との技術協力
・商品、サービスの評判を示すマスコミ記事
・商品、サービスの今後の市場規模や業界内シェアの拡大動向
・同業他社と比較した場合の販売、仕入の優位性

ただし、これらの材料により今後どの程度、新規受注が得られるのか、あるいは、これらの材料が今後どの程度、売上・利益に貢献できるのかを具体的に示す必要があります。

② 経営者の資質

・過去の約定返済履歴などの取引実績
・経営改善に対する取組み姿勢
・財務諸表の質の向上への取組み状況
・ISO等の資格取得状況
・人材育成への取組み姿勢
・後継者の存在

③ その他

・法律に基づき技術力や販売力を勘案して承認された計画(「経営革新計画」「異分野連携新事業分野開拓計画」など)
・企業の技術力、販売力、経営者の資質に関する中小企業診断士等の評価

④ 創業赤字の場合

・創業赤字で当初事業計画と大幅なかい離がない場合は、正常先と判断されます。
・具体的には、黒字化するまでの計画期間が概ね5年以内であり、かつ、売上高及び当期利益が事業計画比7割以上確保されている場合が該当します。

5、キャッシュフローによる債務償還能力

キャッシュフローとは税引後利益に減価償却費を加えた現金余力をいいます。有利子負債総額が年間キャッシュフローによる債務償還能力の10倍以内に収まっていることが財務健全性の目安となっています。

6、経営改善計画等の妥当性

破綻懸念先に区分される債務者が、次に掲げる合理的で実現可能性の高い経営改善計画を策定している場合は、要注意先と判断されます。

計画期間が原則として5年以内であり、かつ、計画の実現可能性が高いこと。ただし、計画期間が5年超10年以内である場合でも、その進捗状況が概ね1年以上順調(売上高と当期利益が計画比8割以上確保されている)であり、今後も概ね計画通りに推移すると認められる場合も含みます。

計画期間終了後の債務者区分が正常先となる計画であること。ただし、計画終了後の債務者が資金調達しなくても事業継続できる場合は、要注意先となる計画でも構いません。

全ての取引金融機関が経営改善計画に基づく支援に関して正式な内部手続きを経て合意しており、その内容が文書化されていること。

金融機関の支援の内容が、債権放棄などの資金提供を伴うものでないこと。ただし、資金提供をすでに行っている場合でも、今後は行わないと見込まれる場合を含みます。また、今後資金提供を行う計画を立てている場合でも、損失見込額を全額引当計上済みであり、追加の損失が見込まれない場合も含みます。

中小企業に関しては、精緻な経営改善計画を策定できない場合であっても、金融機関が作成・分析した資料をもとに債務者格付の判断を行います。また、経営改善計画の進捗状況が計画を下回る(売上高と当期利益が計画の8割に満たない)場合であっても、下回った要因を分析したうえで今後のキャッシュフローの見通しを検討し、債務者格付を判断することになります。

7、金融機関等の支援状況等

金融機関が、継続的な企業訪問を通じて企業の技術力・販売力や経営者の資質といった定性的な情報を含む経営実態の十分な把握と債権管理に努めており、きめ細やかな経営相談、経営指導を通じて積極的に企業・事業再生に取り組んでいる場合、債務者区分の判断にあたってその評価分析は尊重されます。

金融機関による「債務者への働きかけ」の度合いは、債務者区分の判断において重視されます。中小企業が安定した資金調達を望むのならば、金融機関と密度の高いコミュニケーションを図らなければなりません。どうすれば密度の高いコミュニケーションを図れるかは、資金調達の戦略を考える上で最も重要なことの一つといえます。

資金調達力は債務者区分によって決まります。その債務者区分は銀行が判断します。財務内容だけで「正常先」に区分されるにはしっかりとした財務戦略が必要です。また、財務内容に問題が生じた場合でも資金調達に支障がでないようにするためには、日頃から資金調達の戦略をしっかりたてて銀行取引をコントロールすることが重要だといえます。

「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の資金調達力

「破綻懸念先」とは、実質債務超過に陥っており、業況が著しく低調で貸出金が延滞状態にあるなど、元本及び利息の最終の回収について重大な懸念がある債務者をいいます。

「実質破綻先」とは、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、財務内容において多額の不良資産を内包し、あるいは過大な借入金が残存し、実質的に大幅な債務超過の状態に相当期間陥っており、元本又は利息について実質的に長期間(6か月以上)延滞している債務者をいいます。

「破綻先」とは、法的・形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいいます。

「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に区分された企業に対する正常な運転資金の貸出金は、Ⅰ分類債権に債権分類することが認められていません。よって、これらに区分された企業は正常な運転資金を調達することができません。

また、一般保証及び一般担保を拠り所として資金調達することもできません。これらに区分された企業に対する一般保証及び一般担保を拠り所とした貸出金は、Ⅱ分類債権以下に債権分類されるため、貸倒引当金を30%~100%積まなければならず、融資に合理性がないからです。

一方、優良保証・優良担保・特定財源を拠り所とした資金調達は可能です。ただし、優良保証は融資の入り口で利用することがほとんどであるため、この段階で新規の優良保証を付けることはほぼ不可能です。また、優良担保と特定財源は自己資金とほぼ同義です。

結論として、「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」に区分された企業は、実質的には資金調達力がありません。通常の営業活動に必要な資金や設備資金を自己資金で賄わなければならないのです。

この段階に陥ると、通常の財務改善の手法が通用しなくなります。企業単独の努力でこの段階を脱することはできず、銀行等利害関係者の協力なしには財務改善の計画を立てることすらできない状態といえます。

「要注意先(要管理債権)」の資金調達力

債務者区分のうち、要注意先は「正常債権に該当する要注意先」と「要管理債権に該当する要注意先」に分けられます。

「要管理債権に該当する要注意先」とは、「3か月以上延滞債権」及び「貸出条件緩和債権」に該当する債務者をいいます。

(「3か月以上延滞債権」及び「貸出条件緩和債権」については別の項で解説しています)

「要管理債権に該当する要注意先」の資金調達力は極めて脆弱です。

① 正常な運転資金
正常な運転資金とは、正常な営業を行っていく上で恒常的に必要と認められる運転資金をいい、算式で示すと次のようになります。

正常な運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務

「要管理債権に該当する要注意先」に関しては、全ての企業に正常な運転資金の調達が認められるわけではなく、債務者の状況に応じた個別判断によってその可否が判断されます。つまり、個別判断で正常な運転資金の調達が認められない場合は、自己資金で通常の営業活動を行わなければならない状態に陥ります。

② 優良保証付の資金調達
次に掲げる優良保証を付けられる場合は、その保証金額を上限として資金調達することができます。しかし、優良保証は資金調達の入り口で利用するケースがほとんどであり、「要管理債権に該当する要注意先」に区分された後で新規の優良保証を付けることはほぼ不可能だといえます。

・公的信用保証機関の保証
・金融機関の保証
・複数の金融機関が共同して設立した保証機関の保証
・地方公共団体と金融機関が共同で設立した保証機関の保証
・上場かつ有配会社等の保証契約に基づく保証

③ 優良担保の処分可能見込額
次に掲げる優良担保を担保提供できる場合は、優良担保の評価額に掛け目を乗じた処分可能見込額が資金調達力の一つと考えられます。

(優良担保)
・預金
・満期返戻金のある保険
・国債等の信用度の高い有価証券 など
(評価額)
・客観的、合理的な評価方法で算出した時価
(掛け目)
・国債     評価額の95%
・政府保証債  評価額の90%
・上場株式   評価額の70%
・その他の債権 評価額の85%

④ 特定の返済財源
概ね1か月以内に、増資や社債発行、不動産の売却、他金融機関からの借入金などによる財源を調達できる場合は、その特定財源が資金調達力の一つとして考えられます。

「正常先」や「正常債権に該当する要注意先」では、一般担保や一般保証を拠り所として資金調達をすることができます。「正常先」や「正常債権に該当する要注意先」に対する債権はⅠ分類債権であり、貸倒引当金をほとんど積まなくていいからです。しかし、「要管理債権に該当する要注意先」は一般担保や一般保証を拠り所として資金調達をすることができません。一般担保や一般保証を拠り所とした場合でも「要管理債権に該当する要注意先」に対する債権はⅡ分類債権であり、30%~50%の貸倒引当金を積まなければならないため、融資に合理性がないからです。

「正常先」及び「正常債権に該当する要注意先」と、「要管理債権に該当する要注意先」では、資金調達力の面で雲泥の差が生じます。中小企業の経営者はこの点をしっかり理解して「要管理債権に該当する要注意先」以下に区分されないように財務をコントロールしなければなりません。

一方、「要管理債権に該当する要注意先」に区分された企業は、一刻も早く「正常債権に該当する要注意先」以上にランクアップしなければなりません。それに必要な道筋は「卒業基準」として用意されています。数年程度は辛抱しなければなりませんが決してあきらめる必要はありません。ただし、銀行や財務専門家の的確なアドバイスがなければ極めて困難な道筋であることは間違いありません。一刻も早くランクアップするために銀行や財務専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

「要注意先(正常債権)」の資金調達力

債務者区分のうち、要注意先は「正常債権に該当する要注意先」と「要管理債権に該当する要注意先」に分けられます。

「正常債権に該当する要注意先」とは、業績が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある債務者など今後の管理に注意を要するものの、「3か月以上延滞債権」及び「貸出条件緩和債権」には該当しない債務者をいいます。

(「3か月以上延滞債権」及び「貸出条件緩和債権」については別の項で解説しています)

「正常債権に該当する要注意先」に対する貸出金は正常債権として扱われるため、貸倒引当金も比較的少なく、リスク管理債権としての開示も不要です。そのため銀行は「正常債権に該当する要注意先」に対して様々な手法で融資に取組みます。「正常債権に該当する要注意先」にとってみれば「正常先」と同等に様々な資金調達の選択肢を与えられるということです。そういう意味で「正常債権に該当する要注意先」は資金調達力があるといえます。一方、「正常債権に該当する要注意先」は業績や財務内容に問題を抱えている分「正常先」に比べて資金調達力が乏しくなるのはやむを得ないことです。

① 正常な運転資金
正常な運転資金とは、正常な営業を行っていく上で恒常的に必要と認められる運転資金をいい、算式で示すと次のようになります。

正常な運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務

「正常債権に該当する要注意先」は、正常な運転資金を容易に調達することができます。

② 年間キャッシュフローの10倍程度
正常な運転資金以外の設備資金を調達する場合は、債務償還年数が10年以内であるかが判断基準となります。債務償還年数とは、有利子負債総額を年間収益力で除したものをいい、算式で示すと次のようになります。

債務償還年数 = 有利子負債総額 ÷ 年間キャッシュフロー
年間キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費

すなわち、年間キャッシュフローを10倍したものが借入上限の一つの目安と考えることができます(旧産業再生機構「財務健全化基準」参照)。
しかし「正常債権に該当する要注意先」は業績や財務内容に問題を抱えているため、十分な年間キャッシュフローを生み出せず、設備投資資金を調達できないというケースが発生します。あるいは十分な年間キャッシュフローを生み出せるものの、すでに過大な有利子負債があるために設備投資資金を調達できないというケースが発生します。

③ 優良保証付の資金調達
次に掲げる優良保証を付けられる場合は、容易に資金調達することができます。銀行は信用リスクを回避するため「正常債権に該当する要注意先」の企業に対して優良保証を付けるよう求めることが一般的です。年間キャッシュフローだけで資金調達できない場合に優良保証で信用補完することが想定されます。一方、「正常債権に該当する要注意先」は業績や財務内容に問題を抱えているため、保証機関から保証金額を低く抑制されることがあります。

・公的信用保証機関の保証
・金融機関の保証
・複数の金融機関が共同して設立した保証機関の保証
・地方公共団体と金融機関が共同で設立した保証機関の保証
・上場かつ有配会社等の保証契約に基づく保証

④ 優良担保の処分可能見込額
次に掲げる優良担保を担保提供できる場合は、優良担保の評価額に掛け目を乗じた処分可能見込額が資金調達力の一つと考えられます。年間キャッシュフローや優良保証だけで資金調達できない場合に、優良担保で信用補完することが想定されます。

(優良担保)
・預金
・満期返戻金のある保険
・国債等の信用度の高い有価証券 など
(評価額)
・客観的、合理的な評価方法で算出した時価
(掛け目)
・国債     評価額の95%
・政府保証債  評価額の90%
・上場株式   評価額の70%
・その他の債権 評価額の85%

⑤ 一般担保の処分可能見込額
次に掲げる一般担保を担保提供できる場合は、一般担保の評価額に掛け目を乗じた処分可能見込額が資金調達力の一つと考えられます。年間キャッシュフローや優良保証だけで資金調達できない場合に、一般担保で信用補完することが想定されます。

(一般担保)
・不動産担保
・工場財団担保(土地建物・機械・特許権等一括担保)
・動産担保(棚卸資産、機械設備など)
・債権担保(売掛債権など)
(評価額)
・客観的、合理的な評価方法で算出した時価
(掛け目)
・不動産担保 評価額の70%
・動産担保  評価額の70%
・債権担保  評価額の80%

⑥ 一般保証付の資金調達
次に掲げる一般保証を付けられる場合は、保証能力に応じて資金調達することができます。年間キャッシュフローや優良保証だけで資金調達できない場合に、一般保証で信用補完することが想定されます。なお、現在の融資慣行では代表者の個人保証は一般的に徴求されています。

・十分な保証能力を有する一般事業会社
・個人保証

「正常債権に該当する要注意先」は「正常先」と同等の選択肢を与えられているものの、実質的には通常の営業活動資金以外の設備投資資金を十分に調達することはできません。もし、十分な設備投資資金を調達したいと望むならば、業績を向上させて年間キャッシュフローを向上させる取り組みや、過大な有利子負債を圧縮して債務償還年数を短縮する取り組みを行うことによって、債務者区分を「正常先」に上げることが必要です。御社に財務のスキルが備わっているならば債務者格付を「正常先」に上げることは十分可能です。しかし、財務のスキルが備わっていないことが原因で「正常債権に該当する要注意先」にランクダウンしたのかもしれません。その場合でも、財務専門家の力を借りれば「正常先」にランクアップすることは十分に可能なのです。

「正常先」の資金調達力

企業の資金調達力は債務者区分によって決まります。

債務者区分のうち、「正常先」とは、業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる債務者をいいます。

銀行にとって「正常先」に対する貸出金は正常債権であるため、貸倒引当金も少なくリスク管理債権としての開示も不要です。そのため銀行は「正常先」に対して様々な手法で融資に取り組むことができます。「正常先」にとってみれば、様々な資金調達の選択肢を与えられるということです。そういう意味で「正常先」は資金調達力があるといえます。

① 正常な運転資金
正常な運転資金とは、正常な営業を行っていく上で恒常的に必要と認められる運転資金をいい、算式で示すと次のようになります。

正常な運転資金 = 売上債権 + 棚卸資産 - 仕入債務

「正常先」の企業は、正常な運転資金を容易に調達することができます。

② 年間キャッシュフローの10倍程度
正常な運転資金以外の設備資金を調達する場合は、債務償還年数が10年以内であるかが判断基準となります。債務償還年数とは、有利子負債総額を年間収益力で除したものをいい、算式で示すと次のようになります。

債務償還年数 = 有利子負債総額 ÷ 年間キャッシュフロー
年間キャッシュフロー = 税引後利益 + 減価償却費

すなわち、年間キャッシュフローを10倍したものが借入上限の一つの目安と考えることができます(旧産業再生機構「財務健全化基準」参照)。

③ 優良保証付の資金調達
次に掲げる優良保証を付けられる場合は、容易に資金調達することができます。銀行は信用リスクを回避するため「正常先」に対しても優良保証を付けるよう求めることが一般的です。「正常先」は財務内容が良いため、容易に優良保証を付けることができます。

・公的信用保証機関の保証
・金融機関の保証
・複数の金融機関が共同して設立した保証機関の保証
・地方公共団体と金融機関が共同で設立した保証機関の保証
・上場かつ有配会社等の保証契約に基づく保証

④ 優良担保の処分可能見込額
次に掲げる優良担保を担保提供できる場合は、優良担保の評価額に掛け目を乗じた処分可能見込額が資金調達力の一つと考えられます。

(優良担保)
・預金
・満期返戻金のある保険
・国債等の信用度の高い有価証券 など
(評価額)
・客観的、合理的な評価方法で算出した時価
(掛け目)
・国債     評価額の95%
・政府保証債  評価額の90%
・上場株式   評価額の70%
・その他の債権 評価額の85%

⑤ 一般担保の処分可能見込額
次に掲げる一般担保を担保提供できる場合は、一般担保の評価額に掛け目を乗じた処分可能見込額が資金調達力の一つと考えられます。

(一般担保)
・不動産担保
・工場財団担保(土地建物・機械・特許権等一括担保)
・動産担保(棚卸資産、機械設備など)
・債権担保(売掛債権など)
(評価額)
・客観的、合理的な評価方法で算出した時価
(掛け目)
・不動産担保 評価額の70%
・動産担保  評価額の70%
・債権担保  評価額の80%

⑥ 一般保証付の資金調達
次に掲げる一般保証を付けられる場合は、保証能力に応じて資金調達することができます。

・十分な保証能力を有する一般事業会社
・個人保証

「正常先」の企業はさまざまな選択肢があるという点で資金調達力があるといえます。しかし注意しなければならないのは、「正常先」の企業だからといって資金調達の権利を持っているわけではなく、当然に資金調達できるわけではないということです。上記の選択肢はあくまで銀行がその気になれば実行できる貸出の形態であり、銀行が金融庁に正常債権として主張できる根拠にすぎません。中小企業が安定した資金調達を望むのならば、銀行を“その気”にさせる取組みが必要です。資金調達の戦略をしっかりたてて銀行取引をコントロールすることが真の資金調達力と言えるのです。