マネーフォワードでAmazon(出品者)を適切に記帳する方法
【ご注意】
Amazon出品者およびYahoo!ショッピング出品者に関しては、各プラットフォームから提供される取引明細書をもとに記帳することを推奨します。
現在のマネーフォワードの仕様では連携されるデータの質が悪く、上記プラットフォームの連携データだけで適切に記帳することができません。煩雑な修正処理・追加処理が必要となりますのでご注意ください。
2021年11月16日、マネーフォワードはAmazon(出品者アカウント)の取込方法を変更したが、今回のシステム改修には欠陥があることをあなたはご存じだろうか?
自動仕訳ルールの設定さえ適切に行えば、効率よく適切に会計処理できるのがマネーフォワードの魅力だが、今回の改修では、自動仕訳ルールをどのように設定しても、適切な会計処理ができない仕様となっている。
ただし、追加修正をすれば適切な会計処理は可能である。そこでこの稿では、追加修正を前提とした自動仕訳ルールの設定方法と修正の仕方を公開する。
マネーフォワード運用実績10,000時間以上、かつ、ネット通販ビジネスの関与経験豊富な税理士が、ネット通販ビジネスに本気で取り組む皆さんに向けて情報提供したいと思う。
マネーフォワードの仕様
この章ではまず、マネーフォワードの自動仕訳の仕組みをおさらいし、現在のシステムの欠陥を指摘する。
自動仕訳の仕組み
マネーフォワードの自動仕訳は次のような仕組みになっている。
・事前に「明細」のテキストとそれに対応する勘定科目を紐付けする。「自動仕訳ルール」という。
・口座連携機能により、Amazonセラーセントラルから「明細」のテキストが取り込まれる
・「自動仕訳ルール」に基づき、「明細」のテキストに紐付いた勘定科目が表示される
今回のシステム改修によって、Amazonセラーセントラルから取り込まれる「明細」テキストは次の6項目である。
・商品価格合計
・プロモーション割引合計
・Amazon手数料
・その他
・受取
・支払
自動仕訳ルールの設定では、1つの「明細」テキストに対して1つの勘定科目を紐付けするが、次節では6種類の「明細」テキストに紐付けすべき勘定科目を検討する。
「明細」テキストに紐付けすべき勘定科目
「商品価格合計」の取引内容は税抜きの売上高なので、勘定科目は「売上高」でよい。
「プロモーション割引合計」の取引内容は少し込み入っている。Amazonで非プライム会員が2,000円以上購入した際は送料がAmazon負担となる。その場合、経費としての「プロモーション割引合計」とそれを取り消す「その他」が貸借同時に両建て計上される仕組みとなっている。勘定科目としては「支払手数料」を紐付ければよい。
「Amazon手数料」の取引内容はAmazon各種手数料を集約した金額なので、勘定科目は「支払手数料」でよい。
「受取」と「支払」の取引内容はAmazonに対する金銭債権の増減なので、勘定科目は「売掛金」でよい。
上記5項目は紐付けに迷うことはないが、問題は「その他」の紐付けである。
「その他」は下記の取引内容が集約された金額が表示される。
・その他 商品税
・FBA在庫の返金
・プロモーション割引合計
・Amazonポイントの費用(マイナス集計)
・その他 代引手数料
・その他 代金引換 (税)
・その他 ギフト包装
・その他 ギフトラッピングに対する消費税
・その他 配送料
・その他 配送料(税額)
「その他 商品税」の取引内容は売上高にかかる消費税の金額であり、「FBA在庫の返金」の取引内容はFBA在庫の紛失などを理由にAmazonから保証される返金額なので、紐付けされる勘定科目は「売上高」が適切である。
一方、それ以外の取引内容は経費であり、紐付けされる勘定科目は「支払手数料」が適切である。
つまり、「その他」には「売上高」と「支払手数料」が混在しているため、自動仕訳ルールをどちらに設定しても、そのままでは適切に会計処理することができない。私が指摘している欠陥とはこのことである。この件に関しては、2022年1月5日付でマネーフォワードからもアナウンスが出ている。
次章ではその解決方法を示したい。
仕様に合わせた解決方法
この章では、マネーフォワードの仕様を前提とした解決方法を公開したいと思う。なお、具体的な操作手順、設定方法に関して不明点があれば「ネット通販をマネーフォワードで楽々記帳する実践的な方法」で詳しく説明しているのでそちらを参照してほしい。
また、画像をクリックすればクリアに拡大されるので、適宜確認しながら読み進めてほしい。
自動仕訳ルールの設定
まずは、自動仕訳ルールを以下の通りに設定する。
連携サービス | 店舗 | 種類 | 明細の内容 | 一致条件 | 税率 | 勘定科目 | 補助科目 |
Amazon.co.jp (出品者アカウント) | 店舗共通 | 取引内訳 | 商品価格合計 | 完全一致 | 全税率 | 売上高 | Amazon |
Amazon.co.jp (出品者アカウント) | 店舗共通 | 取引内訳 | プロモーション割引合計 | 完全一致 | 全税率 | 支払手数料 | Amazon |
Amazon.co.jp (出品者アカウント) | 店舗共通 | 取引内訳 | Amazon手数料 | 完全一致 | 全税率 | 支払手数料 | Amazon |
Amazon.co.jp (出品者アカウント) | 店舗共通 | 取引内訳 | その他 | 完全一致 | 全税率 | 支払手数料 | Amazon |
Amazon.co.jp (出品者アカウント) | 店舗共通 | 支払手段 | 受取 | 完全一致 | 全税率 | 売掛金 | Amazon |
Amazon.co.jp (出品者アカウント) | 店舗共通 | 支払手段 | 支払 | 完全一致 | 全税率 | 売掛金 | Amazon |
毎月の処理手順
<手順1>
まずは、当月分の仕訳登録を済ませる。その際、Amazon通販は現金商売ではないので、仕訳の単位は「明細」を選択することに注意が必要だ。
<手順2>
次に、仕訳登録後の売上高は貸借ともに税抜金額となっているので税込金額に修正する必要がある。そこで、残高試算表で当月売上高の税抜金額を確認する。
・会計帳簿>残高試算表
・損益計算書>該当月を選択>検索
<手順3>
そして、消費税相当額を売上高に振り替えるために振替仕訳を登録する。
・消費税相当額=売上高(税抜金額)×消費税率
・一般税率なら10%、軽減税率なら8%
・(例)売上高 10,000円、売上返品 3,000円、一般税率の場合
(借方)支払手数料 1,000 (貸方)売上高 1,000
(借方)売上高 300 (貸方)支払手数料 300
なお、振替仕訳を仕訳辞書に登録すれば次月以降の手間が軽減されるので忘れずに登録しておきたい。
<手順4>
最後に「FBA在庫の返金」を売上高に振り替える。
・仕訳帳>該当月を範囲指定、摘要>FBA在庫の返金>検索
・編集>仕訳帳で勘定科目を直接変更(支払手数料→売上高)>保存
なお、消費税相当額を売上高に振り替えた後に「FBA在庫の返金」を売上高に振り替える手順に注意が必要だ。手順先後になると消費税相当額の計算がおかしくなるからだ。また、「FBA在庫の返金」の金額は税込となっているので、仕訳帳で勘定科目を直接変更するほうが早い。
新規不具合情報(2023.12.25)
2023年9月からアマゾンの配送サービスを利用し始めた方は新たな不具合が発生しているので記帳に注意が必要である。取り急ぎ対応方法を示したい。
【不具合の内容】
配送サービスは支払手数料(or荷造運賃)で仕訳すべきだが、摘要テキストが「商品価格合計」となっているため「売上高」の勘定科目が表示される。その結果、売上高の減として仕訳登録されてしまう。
【対応方法】
①まずはそのまま売上高で仕訳登録する
②月締め処理の最初の工程で支払手数料(or荷造運賃)に振り替える
・会計帳簿>仕訳帳
・摘要>請求、借方勘定科目>売上高、>検索
・一括編集
・全ての仕訳を選択するに☑
・借方勘定科目、修正前>売上高、修正後>支払手数料(or荷造運賃)
・対象の編集を実行する
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