損益分岐点をマネーフォワードで計算する詳細な手順

あなたは自分のビジネスの損益分岐点をどの程度正確に把握しているだろうか?

ご存じだとは思うが、赤字から黒字に転換する売上高のことを損益分岐点という。

もしあなたがビジネスをしているなら、いくら売上げたら黒字になるか関心があるのではないだろうか?それどころか、正確な損益分岐点を把握したいと考えているのではないだろうか?なぜなら、損益分岐点はビジネスの運営方針や活動量の基準となるからだ。

そこでこの稿では、マネーフォワードのデモデータを使って損益分岐点を計算する詳しい手順を紹介したいと思う。

もし、あなたが損益分岐点を計算したことがないならこの機会に計算してみることをお勧めする。場当たり的なビジネス運営から脱却する第一歩となることは間違いない。

損益分岐点の理論

まずは、損益分岐点の理論を紹介するが、難しくない。ただし、理論の理解度が計算精度につながるのでしっかりと理解してほしい。

損益分岐点は次の計算式で算出できる。

  損益分岐点 = 固定費 ÷(1-変動費率)

固定費とは、売上高の増減に関係なく発生する費用を意味する。勘定科目で言えば、給与手当や家賃、水道光熱費が固定費の代表例である。

一方、変動費とは、売上高に比例して増減する費用を意味する。勘定科目で言えば小売業の仕入高(売上原価)が変動費の代表例である。

そして上記の計算式のうち、変動費率は売上高に占める変動費の割合であり、次の計算式で算出できる。

  変動費率 = 変動費 ÷ 売上高

したがって、売上高、固定費、変動費の3つの変数が集計できれば損益分岐点は計算できる。

これら3つの変数うち、売上高はすでに集計されているので迷うことはない。一方、固定費と変動費は勘定科目ごとにどちらに該当するか判断することになる。

ただし、同じ勘定科目に固定費と変動費が混在している場合は分けて集計する必要があるし、固定費的な勘定科目であっても一定割合を変動費として集計する方が実態に近い場合もある。

それらの判断は、総勘定元帳や補助元帳で個々の取引内容を確認して行うことになるが、後ほど具体的な判断を交えながら実際にやってみるので参考にしてほしい。

さて、最初に損益分岐点は赤字から黒字に転換する売上高と紹介したが、売上高が損益分岐点を超えたらどうなるだろうか?その場合、あなたのビジネスにおける収益力に比例して最も効率よく利益が積みあがる状態となる。

あなたのビジネスにおける収益力は次の計算式で算出される。

  収益力 =(1-変動費率)

この計算式は、変動費率が60%と仮定すると売上高100円に対し利益が40円計上されることを意味している。この利益は、売上高が損益分岐点に達するまでは固定費に吸収されてしまうが、損益分岐点を超えると固定費を賄う必要がなくなるので、売上高100円に対し利益が丸々40円積み重なることになる。あなたが目指すべき状態に突入するということだ。

この件に関しては別の稿で詳しく説明するが、損益分岐点は事業計画の作成に役立てるのが本来の使い方である。その際、上記計算式を使って目標利益を達成する売上高を計算することになる。この稿では紹介にとどめるが、記憶にとどめておいてほしい。

損益分岐点の計算手順

デモデータの属性

まずはデモデータの属性を紹介する。

・個人事業主
・小売業(ネット通販ビジネス)
・消費税は免税事業者
・確定決算データ(売上高17,064千円、控除前所得3,702千円)

以上を踏まえて、損益分岐点の計算をスタートさせる。

なお、画像をクリックすればクリアに拡大されるので、適宜確認しながら読み進めてほしい。

エクセルフォームを作成する

最初に、売上高、固定費、変動費を集計するためのエクセルフォームを作成する。

① 残高試算表の損益計算書CSV をダウンロードし、デスクトップにエクセル形式で保存

会計帳簿>残高試算表

 

損益計算書を選択、選択期間は全期間、補助元帳を表示に☑、決算整理仕訳を含む>エクスポート>損益計算書(CSV)

 

ダウンロード>左下ファイルを開く

 

ファイル

 

名前を付けて保存>デスクトップ

 

ファイル名:損益分岐点エクセルフォーム>ファイルの種類:Excelブック>保存

 

② エクセルフォームを整える

決算確定額は終了月なので、G列を残して不要な列を消去する

 

次に、売上高から売上総利益までは勘定科目の行を残して不要な行を削除する。勘定科目の列が空白となっている場合は適宜コピーをする。経費に関して補助科目が設定されている勘定科目は勘定科目の行を削除し補助科目を残す。くれぐれも金額がダブらないように注意したい。

 

不要になったA列を削除し、売上総利益、経費合計、控除前所得金額に計算式を入力して正しく損益計算されているか確かめる。

 

終了月を決算確定額に変更し、固定費、変動費の列を追加し、図に従って適宜計算式を入力する。

 

エクセルフォームの完成形。固定費の金額を入力すれば変動費が自動計算されるようになっている。グレーの網掛けセルには計算式が入力されている。

総勘定元帳、補助元帳の確認の仕方

続いて、経費に関して勘定科目or補助科目ごとに取引内容を確認し、固定費と変動費のいずれに該当するか検討するのだが、まずはマネーフォワードで総勘定元帳or補助元帳を確認する具体的な手順を示す。

マネーフォワードは画面の切り替えに時間がかかるため、時短の仕組みとしてタブを複数開いて操作できるようになっている。今回は3つのタブを開いて運用する。

ホームを右クリック>新しいタブで開く

 

3つのタブすべてで残高試算表の損益計算書を開く。

 

真ん中のタブは、残高試算表の勘定科目をクリックして総勘定元帳を開く。

 

右のタブは、残高試算表の補助科目をクリックして補助元帳を開く。

 

左の残高試算表で検討すべき勘定科目or補助科目を確認し、勘定科目の場合は真ん中のタブで検索して総勘定元帳を開く。

 

一方、補助科目の場合は右のタブを検索して補助元帳を開く。

 

以上の要領で勘定科目、補助科目の内容を順次確認していけば効率的だ。

勘定科目、補助科目の具体的な判断例

① 荷造運賃
荷造運賃はFBA納品費用と商品発送費用で構成されている。いずれも売上高の増減に比例して発生する費用なので、全額変動費とする。

② 通信費
通信費はネット利用料、スマホ使用料、HP運営費用、切手代などで構成されている。いずれも売上高の増減に比例していないので、全額固定費とする。

③ 広告宣伝費(Amazon)
売上高に貢献するものの、売上高の増減に比例して発生する費用ではないので、全額固定費とする。

④ 広告宣伝費(補助科目なし)
上記と同様、売上高に貢献するものの、売上高の増減に比例して発生する費用ではないので、全額固定費とする。

⑤ 損害保険料
PL保険料は売上高の増減に比例して発生する費用ではないので、全額固定費とする。

⑥ 消耗品費
消耗品費は梱包資材と事務用品で構成されている。梱包資材は売上高の増減に比例して発生する費用であり、事務用品は売上高の増減に比例して発生する費用ではない。それぞれ集計したところ、約10%が固定費相当と判断した。

⑦ 利子割引料
借入金利息は売上高の増減に比例して発生する費用ではないので、全額固定費とする。

⑧ 外注費
外注費は人件費と同様な性質を持っており、売上高の増減に比例して発生する費用ではないので、全額固定費とする。

⑨ 支払手数料(Amazon)
アマゾン月額登録料、返送手数料、FBA保管料ほか固定費が含まれているが少額だ。よって、10万円程度を固定費に振り替える。

⑩ 支払手数料(Yahoo!ショッピング)(メルカリ)(ヤフオク)
Yahoo!ショッピング、メルカリ、ヤフオクの手数料は売上高の一定割合なので、全額変動費とする。

⑪ 支払手数料(楽天市場)
楽天市場は基本出店料を固定費に振り替える。

⑫ 支払手数料(補助科目なし)
その他の支払手数料は、カプセルゼットほか各種ツールの利用料、税理士報酬、振込手数料などで構成されているので、全額固定費とする。

以上で勘定科目、補助科目ごとに固定費と変動費の集計が完了した。最後に損益分岐点を計算する。

損益分岐点の計算

損益分岐点エクセルフォームの完成形を掲載する。図の要領で計算式を入力すれば損益分岐点の計算ができる。

損益分岐点の計算で分かること

今回の計算結果を受けて、デモデータのビジネスモデルに関して次のようなことが分かる。

損益分岐点が590万円なので、月平均49万円以上の売上高があれば赤字にならない。実績月平均売上高は142万円であり93万円の余裕があるため、突発的な理由で売上高が減少したとしても赤字になりにくいビジネスモデルといえる。

このビジネスモデルの収益力は33%である。すなわち、売上高が100円増加すると利益が33円増加する。

このビジネスモデルでは、月50万円の売上高が必達目標として意識される。商品平均売価が5,000円とすると毎月100個以上の販売数量が必達目標として意識される。この意識に基づいて販売チャンネルの選択や広告宣伝費の投入額を検討することになる。

結びに

この稿では、損益分岐点の具体的な計算手順を紹介した。

損益分岐点は理論的には難しくないものの、実際に計算するとなると何から手を付けてよいか分からない方も多い。そこでこの稿では、マネーフォワードのCSV帳票をテンプレートとして利用する方法を紹介した。

マネーフォワードは全ての帳票をCSVに落とすことができるので経営分析や事業計画に便利なツールだと思う。アカウントの作成自体は無料なのでまだ触ったことがない方はこちらから新規登録して触ってみてほしい。

なお、この稿の最初に、損益分岐点は事業計画の作成に役立てるのが本来の使い方と述べた。それは、あなたにとって黒字転換する損益分岐点は必達目標ではあるものの、努力目標ではないはずだからだ。

あなたの努力目標となる売上高は損益分岐点が分かれば簡単に計算できる。そして、現在との乖離を埋める計画を立てることで、実現可能性が高まる。それが事業計画である。

事業計画に関しては「事業計画書をマネーフォワードで作成する詳細な手順」で紹介しているのでそちらを参考にしてほしい。